早期変形性膝関節症(早期膝OA)とは
早期膝OAは、まだ確立された概念はありませんが、単純X線像では関節裂隙狭小を認めなくても、MRIあるいは関節鏡のどちらかで軟骨の変化を認め、1年間で10日以上続く膝関節痛のエピソードが2回以上と定義されています。
変形性膝関節症の治療法
変形性膝関節症の治療法は手術療法と保存療法があります。
手術療法は主に進行例、症状の重い例に適用されます。
それに対して保存療法は早期から進行期に至るまで幅広く第1選択として適用されます。
保存療法とは?
主に痛みの緩和を目的とした薬物療法や物理療法(電気治療など)、筋力強化などによる機能改善から症状の改善と進行予防を図る運動療法、装具療法が挙げられます。
薬物療法
早期変形性膝関節症に対する薬物療法は、疾患修飾治療薬がない現在、鎮痛薬によって疼痛を抑制することで日常生活動作を拡大し、生活の質を向上させることが目的です。
疼痛は単純X線像上でOAがほとんどない段階から出現してくることがあるため、早期膝OAを診断する上では、単純X線像上で明らかなOA変化がなくても、疼痛がOAに起因するものなのか念頭に置きながら診察を行うことが重要です。
早期膝OAの疼痛は、滑膜炎がより強く影響します。
滑膜炎によって放出された炎症性サイトカインが侵害受容器のイオンチャネルを受容体の興奮性を亢進させ、関節への侵害刺激に対する閾値が低下ことで痛みが生じます。
そのため経口および外用NSAIDs、選択的COXー2阻害薬やヒアルロン酸関節内注射によって炎症を抑制することが疼痛改善や膝OA進行予防に効果的と考えられています。
人工膝関節置換術
膝OAへの保存加療が無効であった場合、他の医療選択肢の1つとして人工膝関節置換術が挙げられます。
そのような症例において、症状が強くとも損傷部位が限局してることもあり、人工膝関節部分置換術(UKA/PFA)や両十字靭帯温存人工膝関節置換術が適応となることもあります。しかし必ずしも人工膝関節手術を行えば必ず痛みが取れるものでもないため、適応をしっかり見極めることが大切です。
UKA
手術適応
- 疾患:内側または外側に病変が限局した変形性膝関節症、骨壊死症
- 関節可動域:屈曲拘縮15°以下、屈曲角度110°以上
- 靭帯状況:前十字靭帯(ACL)、内側側副靱帯(MCL)を含め全膝関節靭帯が温存されている。
- アライメント:ストレス撮影でない半膝では大腿脛骨角(FTA)180°程度、外反膝ではFTA170°程度まで矯正される。なお矯正角度は大きくても10°程度までであり、術前アライメントの1つの目安として160〜190°程度のFTAと考える。
PFA
手術適応
- 膝蓋骨大腿関節に限局下変形性膝関節症または骨壊死症
- 全下肢アライメントはneutral alaignment(±5°以内)
- 膝蓋骨不安定性がない症例
- 良好な関節可動域が保たれている。
BCR TKA
手術適応
- 疾患:変形性膝関節症、骨壊死症
- ACLを含む膝関節全靭帯機能が温存されている(MRI撮像は必須)。
- 関節可動域:屈曲拘縮10°以下、屈曲角度120°以上
- アライメント:UKAとほぼ同様にストレス撮像にてアライメントが矯正される必要がある。現時点では1つの目安として165°以上FTA185°以下と考える。
- 2顆ないしは3 顆に病変が及ぶ
- BMIが35以下