リハビリテーション

「慢性疼痛に対する認知行動療法」文献抄読

慢性疼痛に関して調べていくと決して痛めた部位に構造・機能上問題がないこともあります。

それで”ずっと痛い”と訴えられる患者様を経験することがあります。

そのような場合,特にこの認知行動療法という手段はとても大切だと思います。

今回はそんな点をまとめていきたいと思います。

 

 

そもそも認知行動療法ってなに?

認知行動療法(cognitive behavioral therapy;CBTは,心理療法の一つです。CBTは,第一世代,第二世代,第三世代と発展してきました。

第一世代は,良い結果が得られるから行動しようと思うといった人間の学習に基づく行動理論です。

第二世代は,考え方や捉え方が行動に影響を及ぼすという考えが追加されたものです。(例;物を持つと痛いと感じるからやらない)

第三世代は,近年出てきた考え方でマインドフルネスやコミットメントセラピーのような何かの経験に対する捉え方や考え方を変えていくという物位です。

しかしこの第三世代の認知行動療法は,日本ではなかなか浸透していないのが現状です。これからは,CBTを取り入れたQOL向上戦略が治療効果を上げるうえで重要となります。

 

 

慢性疼痛に対するCBT

1つの場面を想像してみてください。仮に重い物を持ったとします。腰に激痛を感じました。それが2回,3回と続きます。このブログを読んでくださっているみなさん,そんなことが続いたら重い物を持とうとするでしょうか?恐らくしなくなるでしょう。それは痛みという負の感覚・感情が生まれるからです。このような場面は無限に考えることができます。CBTを理解する上で,今考えた思考過程が重要となります。

CBTの中核をなすのが認知行動モデルです。認知行動モデルでは,上記のような経験に対する反応を「認知」「感情」「行動」「身体感覚」の4つの関連・循環として捉えるというものです。図1にあるような状況や感情が悪循環を起こすということです。

 

その結果,慢性疼痛・機能障害・QOL低下を引き起こすのです。ここの悪循環を好循環に変えていくのがCBTです。ただ,感情と身体症状は結果として生まれる物なので変化させるのは難しいです。しかし,行動と認知は変えることができます。つまり痛み =悪ではなく痛みに対する認知を変化させ,行動を促すことがCBTの目指すところである。それをわかりやすくまとめたのが図2です。

 

実際の介入方法

まず慢性疼痛患者の特徴として極端な思考パターンがあります。痛みがあるかないかの完全主義,予測の立てすぎ,強迫思考などがあります。そのために活動もやりすぎ,やらなさすぎが見られやすいです。その思考回路を改善していきます。

  • 痛みはすぐにゼロにはならない
  • 痛みの捉え方を変えていく
  • 一気に改善ではなく,小さくても出来たことを少しずつ増やしていく
  • そのような気付きに敏感になり,自己効力感を向上させる

これらを軸にまず,目標を設定していきます。短期と長期で目標を決め,それを達成するために必要な運動を実践していきます。もちろんあまりに無謀な目標は避けます。

そして運動のレベルを徐々に上げていき,”大丈夫” ”出来た”を増やしていき,痛みを改善してきます。つまりセラピスト側の声かけが重要となります。これが実際の治療方法です。

 

 

治療効果のメカニズム

ここからは,勉強会では扱われなかった部分を自分で調べたのでまとめたいと思います。CBTはどうしても信じる心みたいな宗教チックなところがあり,”それでなんで痛みが良くなるのか?”と言われることがあります。ではなぜ痛みが改善されるのでしょうか?もちろん最初の痛みは炎症等の器質的な問題が原因で生じます。

しかし,痛みが続いて慢性化すると疼痛信号が脊髄後角に増幅して伝達されます。さらに痛みに対する不安があるとそのような痛みの信号を抑制してくれる中脳辺縁系ドパミンシステム,下行性疼痛抑制系が機能しにくくなり前頭前野(目標を持って行動しようとする意欲に関わる)の機能破綻を起こします。すると活動しなくなってしまうのです。

その状態を断ち切るために扁桃体(痛みに対する負の情動を増幅する)の過活動を抑制させる必要があります。

それをCBTを用いることにより恐怖心,不安感を取り除くことが可能となり,痛みが改善していくのです。決して思い込めばいいということではないのです。

 

 

さいごに

自宅で簡単に行えることを最後にお伝えします。それは瞑想です。瞑想を行うと扁桃体を抑制し,前頭野を活性化させることが出来ます。ぜひ,一度取り入れてみてはいかがでしょうか?