整形外科学

FAIの診断におけるエコーの有用性」「FAIの保存治療の実際

FAIとは?

FAIとは大腿骨寛骨臼インピンジメントのことを指し、股関節の疾患のことをいいます。

股関節は骨盤側の寛骨臼と大腿骨側の大腿骨頭からなります。

大腿骨寛骨臼インピンジメントは、寛骨臼側と大腿骨側との繰り返しの衝突・接触により発症します。

大腿骨寛骨臼インピンジメントは更に、大腿骨頭頚部移行部の形態異常のcam変形、寛骨臼縁の形態異常のpincer変形に分類されます。

cam変形では、大腿骨頭が肥大化することで、寛骨臼との隙間が狭くなることで、関節軟骨あるいは関節唇を突き上げて障害を及ぼします。

pincer変形は寛骨臼が大腿骨を覆いかぶさるようになることで隙間が狭くなり、関節唇や関節面に障害を及ぼします。

FAIの診断におけるエコーの有用性

FAIを惹起する骨形態異常は、X線やCT、MRIを用いて評価されます。

また、関節内組織についてもMRI放射状断像や関節造影後CT放射状断像を用いることにより高精度に画像評価が行るようになっています。

しかし、いずれのモダリティーにおいても股関節の静的評価になります。前述した通り、インピンジメントとは関節運動に対して生じるものであり、動的な病態を評価していく必要があります。

近年では、超音波検査(エコー)の性能向上に伴い、運動器においても軟部組織あるいは骨軟骨表層の観察にエコーが広く用いられるようになっています。

股関節領域では寛骨臼あるいは大腿骨頭に至るまでの筋腱組織が詳細に描出され、血管や神経などの描出も行えるようになっています。

股関節におけるエコーを用いた診察法

エコーでの診察を行う前に、圧痛部位や疼痛誘発動作の有無を行います。

圧痛部位や筋腱組織への伸長ストレスや抵抗を加える疼痛誘発テストにより病変部をできる限り特定し、エコーにより観察すべき組織を予め想定しておきます。

エコーにおいて身体に当てる部分をプローブといい、股関節周囲は筋組織が厚いため、深層までの観察がしやすい低周波プローブが用いられます。

プローブには種類があり、リニア型、セクタ型、コンベックス型に分けられます。股関節周囲組織の解剖学的位置の把握や関節内外への注射などを行うにはリニア型が最も汎用性が高く有用です。

FAIとの鑑別として行う鼠径部の評価では、プローブを当てる方向として、長軸、斜位(大腿骨頚部に対して平行)、短軸、逆斜位(鼠経靭帯に対して平行)などを用いて行います。

股関節周囲の筋腱については長軸および短軸方向で走査すると評価しやすく、関節腔内については浅層の評価であれば頚部軸に平行に向き合うように操作すると描出が行えます。

いずれの場合も、大腿骨頭および下前腸骨棘などの骨表面を起点としてプローブを動かすことにより観察しようとする組織を同定しやすくなります。

エコーの利点としては骨軟部組織の形態評価だけではなく、軟部組織のリアルタイムの動態評価あるいは血流評価を行える点になります。


画像1.各種プローブ(左からリニア型、セクタ型、コンペックス型)

FAIの保存治療

FAIの保存治療では、疼痛誘発肢位を避ける指導、薬物治療、関節内注射、FAIトレーニングを組み合わせて行っていきます。

疼痛誘発肢位を避ける指導では、診察により痛みを誘発する肢位を特定すること、普段の日常生活やスポーツにおいて疼痛が誘発される動作を極力行わないように指導します。

FAIにおいて最も多い疼痛誘発肢位は、股関節屈曲内旋動作になりますが、開排動作でも疼痛を訴える場合があります。

FAIトレーニングの目的は、股関節周囲筋のストレッチによりこわばりや痛みを軽減させること、股関節周囲筋の筋力強化により股関節の安定性を高めることです。

また、股関節のみではなく、腰部の柔軟性改善や体幹機能の改善から隣接関節である股関節の負担を軽減させていきます。

さいごに

今回は「FAIの診断におけるエコーの有用性」「FAIの保存治療の実際」について学び、まとめていきました。

FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)の診断時のエコーの有用性、保存治療について理解を深めることができました。

FAIの診断時には、FAIの病態からも動的での評価を行うことが重要になります。

そのためにエコーを使用することが有用であり、原因組織の追求にも有効であると学びました。

FAIの保存治療では、運動療法において股関節周囲だけではなく、体幹機能など多方向からの影響も考慮して治療していく必要があると感じました。

PS:ケースシリーズ論文形式にてFAIの理学療法を執筆していきたいと考えています。