リハビリテーション

「足底腱膜炎の保存療法:理学療法,装具療法の効果と限界」文献抄読

今回は2018年MB Orthp.31での特集に掲載されていました。

はじめに

足底腱膜炎は、日常の診察において遭遇する頻度の高い疾患である。

足底腱膜炎の治療は、保存療法と手術療法に大別されるが、足底腱膜炎の大部分の例で保存療法により症状が改善するため、保存療法が治療の第1選択となる。

保存療法の中でも、理学療法や装具療法はその有効性を示す報告が多く、患者様への侵襲が少ないことから、足底腱膜炎に対する保存療法として行われることが多い。また、理学療法や装具療法は、組み合わせ行われることでより良好な治療効果を期待できる。

しかし、理学療法や装具療法を組み合わせて行っても、症状が改善しない治療抵抗例も存在し、このような場合、より侵襲の大きい保存療法や手術療法を考慮する必要がある。

足底腱膜炎に対する初期対応

来院時、疼痛が強く荷重が困難なことが多い。疼痛の強い時期は患者様が理学療法や装具療法を実践できないこともある。まず、疼痛の鎮静化するために可能な範囲で局所の安静を指導し、消炎鎮痛剤の処方を行う。そのうえで理学療法や装具療法を行う。

理学療法

足底腱膜炎に対する理学療法として、アキレス腱および足底腱膜のストレッチングを推奨する報告が多く、その有効性が示されている。

Porterらは足底腱膜に対するアキレス腱の持続的ストレッチングおよび間欠的ストレッチングの有効性を報告し、両者の間で治療成績に差はなかったとしている。

DiGiovanniらは、足底腱膜炎に対してアキレス腱のストレッチングで治療した群と足底腱膜のストレッチングで治療した群の治療開始後8週での成績を比較し、両群とも良好な成績であったが、足底腱膜のストレッチングで治療した群のほうがより良好であったと報告している。

Engkananuwatらは足底腱膜炎に対し、アキレス腱のストレッチング単独で治療した群とアキレス腱と足底腱膜のストレッチングを併用し治療した群でその治療成績を比較し、アキレス腱と足底腱膜のストレッチングを併用し治療した群のほうが治療開始後4週の時点でより効果的であったと報告している。

ストレッチングの頻度や時間、回数に関して統一された見解はないが、足底腱膜炎の理学療法における過去の報告では、週に5日、1日に2セット行うプロトコールを使用しているものが多い。

 

装具療法

足底腱膜炎の装具療法において、その有効性を示す報告は散見され、患者様への侵襲が少ないことから足底腱膜炎の保存療法の1つとして行われることが多い。足底腱膜炎の装具療法として、ヒールパッドやヒールカップ、アーチサポートなどのインソールや機能的装具が選択される。

現在のところ、装具選択に関する明確な基準はないが、足底腱膜炎のに対する装具は、荷重時の足底腱膜にかかる負担を軽減させ、症状を緩和させる目的で使用されるため、患者様ごとに足底腱膜炎の発症要因を考慮し装具を選択する必要がある。

理学療法および装具療法の効果

Prefferらは足底腱膜炎に対してストレッチングのみで治療した群とストレッチングとインソールを併用し治療した群を比較し、ストレッチングとインソールを併用し治療した群でより治療成績が良好であったと報告している。

Landorfらはストレッチングとヒールパッド使用し治療した群のほうが、ストレッチング単独で治療した群よりも良好な治療成績であったことを報告している。

しかし、近年のシステマティックレビューによると、理学療法は、足底腱膜炎発症後2週から4か月は足部の疼痛や機能を改善させるが、それ以降は治療効果が期待できないことを報告している。
装具療法においては発症2週から1年は治療効果が期待できるとしている。

数か月に及んで症状が残存する治療抵抗例に対しては、より侵襲の大きい保存療法や手術療法を考慮する必要がある。