リハビリテーション

スパイラルライン(SPL)

概説

スパイラル・ライン(Spiral Line:SPL)は二重の対抗する螺旋で身体を取り巻いている

 

SPLは、後頭骨の両側から後上背部を通って反対側の肩につながり、肋骨前面を回って臍の高さで身体中央を横切り、起始部と同側の股関節まで走る。

股関節からは「縄跳びのロープ」のように大腿外側から下腿前側に沿って内側縦足アーチまで走り、足底を通過して下肢の後外側を坐骨まで上行し、(姿勢、または体位によって左右とどちらかの)脊柱起立筋筋膜へ入り、後頭骨の起始点に近い場所で停止する。

 

姿勢機能

SPL身体を二重に対向する螺旋で取り巻き、この2重螺旋はすべての平面において身体のバランス維持を助ける

 

SPLは足底アーチと骨盤角とを結び、歩行時における膝の効率的な軌道決定のねじれ、回旋、側方偏位を引き起こし、SPLに起因した代償パターンの助長を招く。

特に下肢に直腸的な負荷がかかるような姿勢や運動パターンに応じて、下肢からの力は同側を上行し、歩行動作では仙骨で反対側へ移行する。

 

SPLに関わる筋膜の多くは、他の基幹経線(SBLSFLLL)とディープバックアームライン(Deep Back Arm Line:DBAL)にも加わる。

SPLは多様な機能に関与し、SPLの機能不全は他のライン機能に影響を及ぼす。

世界中のほとんどの人々は、利き手と非利き手、利き足と非利き足、利き目と非利き目があり、身体の左右でSPLのバランスが完全にとれることはまれである。

SPLは機能的に広範囲の状況下における適応性がある。

 

運動機能

SPLの全体的運動機能は、身体に斜めの螺旋と回線運動を生み出し、伝達することである。SPLの遠心性収縮や等尺性収縮は、体幹と下肢を安定化して回旋による転倒を防ぐ

 

詳細

他のラインとは異なり、SPLライン追跡は身体上部から開始する。

すべての生体ラインはラインの両端、あるいはラインの走行に沿った「路線」のほぼすべての場所で、筋筋膜力を産出することが可能である。

 

実際にすべての「路線」は筋筋膜力を生み出してる。

SPLは後頭骨と側頭骨接合部の上項線外側、あるいは上項線上で頭蓋骨の外側面に起始し、後頭を下行し頭板状筋に連結する。

途中で頸板状筋とつながり、C6からT5の棘突起に至る。

次にC6からT5の棘突起先端を越え、反対側の大・小菱形筋の筋膜しーとに接続する。

(板状筋から上後鋸筋までの薄い小さな機械的接続と考えることもできる。上後鋸筋は大・小菱形筋の深層にあり、脊柱起立筋のすぐ外側で肋骨に付着する。)

 

菱形筋は同じ牽引ラインに沿って肩甲骨内側縁まで進み、頭蓋骨の左側から起こったラインは右肩甲骨に接続する。

頭蓋骨の右側に起点したラインも同様に左肩甲骨に接続する。

肩甲骨の内側縁から肩回旋腱板筋の棘下筋と肩甲下筋へは直接の筋膜接続があるが、アームライン(AL)で解説する。

 

SPLは、肩甲骨の内側縁で菱形筋・前鋸筋と不明瞭であるが強力な筋膜接続する。

解剖所見において、菱形筋と前鋸筋との接続は両筋の肩甲骨自体への付着よりも強力で「筋的」である。

菱形筋は大部分の前鋸筋と接続する。

前鋸筋は線維方向が様々な複合筋である。

 

前述したように、SPLは主に前鋸筋の下部を通る。

前鋸筋は肩甲骨内側縁の深部側から起始して上位9本の肋骨に付着するが、第5肋骨から第9肋骨に付着する部分をSPLに該当する。(SPLと頭部前方位姿勢参照。前鋸筋内で別の方向をとる。)

前鋸筋と菱形筋との筋筋膜連続体は明確に剖出できる。

もし、肩甲骨関節窩を後方に回転し前鋸筋を剖出できれば、菱形ー前鋸筋を呼称するような筋があり、上部胸椎棘突起から外側肋骨までのほぼ中間で肩甲骨内側縁は筋膜で連結しているのが明確にわかる。

肩甲骨を深部から切り離しても、菱形筋と前鋸筋は強力に接続したままである。

 

SPLは「寄生ライン」として、多くの他のラインと関連する。これはSPLに含まれる構造の多くが他のラインの一部でもあることを意味する。

SPLに関連してよくみられる姿勢代償パターンには足根回内/回外、膝回旋、足部に対する骨盤回旋、骨盤に対する肋骨回旋、一側肩挙上、あるいは前方偏位、頭の傾き、偏位、回旋がある。