リハビリテーション

「踵部疼痛症候群の診かた」文献抄読

日々生活や運動する中で踵(かかと)が突然痛くなったりすることがありますか?
それはもしかしたら踵部疼痛症候群なのかもしれません。

 

踵部疼痛症候群って?
耳にしたことがない言葉だと思います。

要約

踵部痛は整形外科外来診療で遭遇する頻度が高い愁訴の一つである。踵部に疼痛を有する疾患の総称を踵部疼痛症候群と呼ぶ。踵部疼痛症候群に対して適切な診断を下すには,現病歴の聴取,疼痛の種類と部位の確認が有用である。足底腱膜炎は起床時の疼痛,足底線維腫症は土踏まず部の足底腱膜に腫瘤と疼痛を認める。踵部脂肪褥症候群は踵部足底中央の深部に疼痛と,滑液包炎に特徴的な浮遊感を認める。踵骨疲労骨折は安静時にも疼痛を認め,踵部に広く腫脹を生じる。神経絞扼性障害は踵部内側に焼けるようなヒリヒリした疼痛を訴える。それぞれ疼痛の種類と圧痛部位を念頭に置き,病歴および局所所見をしっかり確認することが重要である。

 

踵部疼痛症候群とは

踵部と書くピンとしにくいですが、「かかと」の事です。
踵部疼痛症候群を一言で表すと「かかとに痛みが出る事」を言います。踵に痛みが出る原因は足底腱膜炎、足底線維腫症、踵部脂肪褥症候群、踵骨疲労骨折、絞扼性神経障害があります。

 

足底腱膜炎とは

踵の痛みで1番多い原因が足底腱膜炎です。
40〜50代に多く、起床時もしくは長時間の安静後最初の一歩で痛みが出ます。
歩き続けると痛みは減るけど、長く歩くと痛みがまた出てくる状態です。

 

どんな人になりやすいのか?

  • 土踏まずが減っている状態(扁平足)
  • 太りすぎている
  • 右と左で足の長さが違う(脚長差)
  • ふくらはぎの硬さと筋力低下(下腿三頭筋の緊張亢進及び筋力低下)
  • 足裏の腱膜が硬くなっている(足底腱膜の拘縮)
  • 足の使い過ぎ
  • 硬い靴を履いている
  • 足に合わない靴を履いている

どんな治療をするのか?
活動量の制限や足底腱膜・ふくらはぎのストレッチ、ステロイド投薬(NSAIDs)、足底板入れたりします。それでも改善が得られなかった時に足底腱膜部分切離術を行うことがあります。

踵部脂肪褥症候群とは

踵の脂肪が炎症し、損傷や萎縮することによって踵よりの足裏に鋭く・づきづきとした痛みが出現します。裸足や固い路面での歩行によって痛みが悪化します。足底腱膜炎と似た症状なので間違えられることが多いです。

 

どんな治療をするか?
治療は安静、アイシング、ステロイド内服で行うことが多いようです。足底板を入れることで負担を減らすこともあります。

踵骨疲労骨折とは

踵に負担がかかりすぎて疲労骨折することがあります。痛くなる前に活動量が増えたり、固い路面で活動することが多くなったなどのエピソードがあることが多いとされています。
踵周りの炎症が見られ、最初の頃は運動のみの痛みですが、ひどくなると安静にしていても痛みが出ることがあります。

 

どんな治療をするか?
治療は、軽い痛みであれば運動量を制限し、痛みが強ければ免荷を行います。
運動時には柔らかい足底板を入れることがあります。

 

絞扼性神経障害とは

聴き慣れない言葉だと思いますが、絞扼(こうやく)と呼びます。絞扼とは、締め付ける・圧迫するという意味です。絞扼性神経障害とは何かを理由に神経が圧迫されることで神経症状を来すことを指します。

 

踵に焼けるような痛みやヒリヒリする痛みがある場合はこの絞扼性神経障害の可能性があります。考えられる病態としてBaxter Neyropathy、足根管症候群があります。

 

Baxter neuropathyとは
足関節より下には多くの神経があるのですが、その一つに外側足底神経の第1枝があります。この神経が圧迫されると踵の底が焼けるような痛みやヒリヒリ感が出てきます.下の画像に赤線で「外側足底神経及び動脈」と書かれているところです。

どちらの神経も圧迫されると歩き始めは軽度の痛みでも長時間の歩行や立位で痛みが悪化します。

足根管症候群とは

足根管は内側くるぶしの後ろ下にあり、管状になっています。管状の中に後脛骨筋腱長拇指屈筋腱、長趾屈筋腱、後脛骨動静脈、脛骨神経があるのですが、脛骨神経が圧迫されて痛みが生じます。

足関節の内側くるぶしの後ろ下から踵の底に鈍痛が生じます。時には針で刺すような痛みや違和感などを感じること があります。荷重時に症状が悪化しますが、寝ているときやお風呂入っている時ににも痛みが強くなることもあります。

 

Baxter neuropathy、足根管症候群の治療は安静、NSAIDs、プレガバリン、ビタミンB群、足底板の装着、ストレッチが行われます。

僕の臨床経験から

ふくらはぎや足裏が硬く痛みが出ることが多いですが、これらでの原因ではストレッチで痛みが軽減することが多く、通院するまでに至ることが少ない印象です。

僕が臨床で何回も通ってもらうことになる方の特徴としては、「足趾が握れない・握ったまま足首を回せない方」、「足底とクルブシのアラメントが後方にズレてしまっている(アキレス腱と脛腓骨の距離が近くなっている)方」がそれを修正していくのに期間を要するため通院が長くなることが多いです。外反母趾がある方は上記のことが起こりやすい印象でもありますので、外反母趾気味の方はたまに足趾のグーチョキパーなど出来るかたまに確認すると予防にもなると思いますのでよかったら行ってみてください。

外反母趾の方でなくてもやってみるのもいいと思います。

 

終わりに

ストレッチをやったら痛みが引くことが多いですが、ストレッチしても痛みが取れない、ストレッチ後は痛み引くけどまた痛みが出る場合があります。その時は無理をせず、病院や整形外科クリニックに相談する事をお勧めします。また、ストレッチ後また痛くなることがあるのであればここで載せた事以外のことの可能性や姿勢・体の動かし方などが問題となることがあります。