リハビリテーション

変形性膝関節症の保存療法②|圧痛触診から介入まで若手PTの臨床思考フロー

変形性膝関節症の保存療法②|圧痛触診から介入まで、若手PTの臨床思考フロー

> 前回は「2本柱」の考え方を整理した。今回はその実践編——「どの組織が痛いか」を触診で特定し、「なぜそこにストレスが集中しているか」を動作分析で明らかにし、具体的な介入に落とし込むまでの手順を一気に通す。

前回の記事で「対症療法的PT × 原因療法的PT」の2本柱フレームを理解した。しかし臨床ではフレームだけでは動けない。「実際の患者の前でどう動くか」が問われる。本稿はその実践手順だ。圧痛の取り方、メカニカルストレスの読み方、具体的な徒手操作と運動処方まで、一連の思考フローとして整理する。

STEP 1|圧痛評価で「どの組織が痛いか」を特定する

まず手を当てる前に仮説を立てる

触診を始める前に、問診と視診で仮説を絞る。

  • どんな動作で痛むか:歩き始め・階段・しゃがみ込み・長時間歩行
  • 痛みの部位:膝前面・内側・外側・後面
  • 増悪・緩解因子:安静で楽になるか、温めると楽か、荷重時のみか

膝OA患者の圧痛好発部位は、①膝蓋下脂肪体(前面痛)、②内側関節裂隙(内側痛)、③鵞足および半膜様筋(内側〜後内側痛)の3点である。このいずれか、または複数が圧痛部位となることが多く、まずこの3点を系統的に触診することが出発点だ。

①膝蓋下脂肪体の触診

膝蓋下脂肪体は、膝蓋腱の左右(膝蓋腱内側縁・外側縁)から触診する。

手順

1. 膝関節を約20〜30°屈曲位に保持する(脂肪体が前方に出てきて触知しやすい)

2. 膝蓋腱の内側縁・外側縁それぞれを母指で圧迫する

3. 同肢位のまま膝関節を屈曲させ、圧痛が増悪するかを確認する

膝蓋下脂肪体は、膝蓋腱の後面(深層)に接して位置し、膝蓋骨下極と脛骨粗面前上方の間を充填している。屈曲が進むにつれて膝蓋腱が後方へ緊張・接近するため、脂肪体は関節前方腔へ押し込まれるように変形し、この部位のインピンジメントが疼痛の原因となりうる。屈曲で増悪する前面痛は脂肪体炎症を強く示唆する。伏在神経の膝蓋下枝が脂肪体内を走行するため、触診時に「ズキッとした鋭い痛み」を訴えることが多い。

②内側関節裂隙の触診

膝関節を軽度屈曲位(20〜30°)に保ち、内側関節裂隙(大腿骨内側顆と脛骨内側顆の間)を母指で内側から直接圧迫する。

この部位の圧痛は、内側半月板(外周1/3のみ神経支配)・内側側副靭帯・関節包・滑膜が候補となる。半月板損傷合併を疑う場合は、McMurray test(回旋負荷をかけた屈曲伸展)を追加する。

注意:膝OAにX線上Grade IIIの変化があっても、内側関節裂隙に圧痛がない患者はいる。逆にGrade Iでも著明な圧痛を持つ患者がいる。X線所見で「ここが痛いはず」と決めつけない。

③鵞足・半膜様筋の触診

鵞足は縫工筋腱・薄筋腱・半腱様筋腱の集合付着部で、脛骨粗面の内側・やや遠位に位置する。圧痛好発部位は脛骨内側面の前方やや上部だ。

手順

1. 膝関節を伸展位〜軽度屈曲位に保持

2. 脛骨粗面の内側縁より指1〜2横指内側・遠位を圧迫

3. 膝関節外旋位・膝屈曲の抵抗運動で疼痛が増悪するかを確認

鵞足の圧痛は内側関節裂隙の圧痛と混同されやすいが、解剖学的位置(関節裂隙より遠位・前方)を確認すれば鑑別できる。

半膜様筋は脛骨内側顆内側部から後部に付着し、斜膝窩靭帯・膝窩筋膜・膝後方関節包・後斜靭帯・内側半月板など多方向に展開する。後内側の圧痛は半膜様筋の評価が必要だ。

腓腹筋の短縮(足関節背屈制限)は荷重時の代償として膝外旋位を助長する原因となりやすく、「腓腹筋が過緊張するから外旋する」ではなく「腓腹筋短縮が外旋を助長する」方向で捉えることが正確である。一方、鵞足筋群(半腱様筋・薄筋・縫工筋)と膝窩筋は、膝過外旋位に対して持続的な伸張・抵抗を強いられることで二次的な過緊張をきたしやすく、これらへのアプローチは外旋の是正と並行して行う必要がある。過外旋を評価し、その誘因となっているメカニカルストレスを次のSTEPで探る。

STEP 2|動作分析でメカニカルストレスの源を探る

KAM(膝関節外反モーメント)を理解する

膝OAの内側型(内反膝)に特有のメカニカルストレスがKAM(Knee Abduction Moment:膝関節外反モーメント)だ。これは「床反力ベクトルが膝関節の内側を通過することで発生する、膝を内反させようとする外力」である。

KAMが大きいほど内側関節面への圧縮ストレスが増大し、内側半月板・軟骨下骨・内側関節包への負荷が高まる。歩行中のKAM値は膝OAの進行と相関することが示されており、治療のターゲットとして重要だ。

健常者でも歩行中にKAMは発生するが、それを最小化する2つのメカニズムを持っている。このメカニズムが破綻したとき、内側へのストレス集中が起こる。

KAM最小化メカニズム①:下腿の内旋

荷重応答期(LR)から立脚中期にかけて下腿が大腿骨に対して内旋位をとることで関節面の整合性が高まり、荷重の集中が軽減される。内側コンパートメントへの過剰な外反ストレス(内外反安定性)は主に内側側副靭帯(MCL)と鵞足筋群が担い、ACLは回旋および前後安定性を主として担う。このため、下腿内旋が不十分な場合には膝外反・脛骨外旋位での立脚が強いられ、MCLへのストレスが増大するとともに内側への圧縮ストレスが高まる。

臨床確認:座位での膝屈曲伸展時に、脛骨が内旋しながら伸展するか(スクリューホームムーブメント)を確認する。内旋不足があれば、膝窩筋・下腿後部の柔軟性低下や、足部回内・外旋拘縮を疑う。

KAM最小化メカニズム②:骨盤の側方移動・前傾

立脚中期に骨盤を患側へわずかにスウェイ(側方移動)することで重心が内側に移動し、床反力ベクトルが膝関節の内側から遠ざかりKAMが低下する。また骨盤前傾による体重移動も同様の効果を持つ。

膝OA患者でこの骨盤側方制御が不十分な場合、中殿筋など股関節外転筋の筋力低下・筋活動タイミングの問題が背景にある。

歩行観察のチェックポイント

  • 立脚中期の骨盤側方移動はあるか(Trendelenburg徴候の程度)
  • 立脚後半に股関節・膝関節の伸展で推進できているか
  • 患側立脚時に体幹が患側へ過剰に側屈していないか(代償)

足部・足関節からのボトムアップ評価

膝OAが進行して内反変形が強くなると、足部アーチが潰れ(扁平足化)、下腿が外方傾斜する。この状態では踵接地後にアンクルロッカーが働くとき、足関節が回内位のまま背屈する。つまり「回内位でしか背屈できない」状態になり、足部の過回内が固定化する。

確認すべき点

  • 非荷重位・荷重位でのアーチ高
  • 足関節背屈ROM(足部回外位・回内位での違い)
  • 荷重時の下腿傾斜方向

足関節背屈制限がある場合、代償として膝関節の過屈曲や骨盤前傾が生じ、膝への負担がさらに増大する。

STEP 3|対症療法的介入——組織へ直接アプローチする

STEP 1で「どの組織が痛いか」が特定できたら、その組織への直接介入を行う。

膝蓋下脂肪体へのアプローチ

徒手アプローチ:膝蓋骨を遠位に誘導しながら脂肪体を前方に押し出すようにモビライゼーションを行う。脂肪体が関節内に挟み込まれている状態を解放することが目的だ。

テーピング:膝蓋腱の内側・外側から脂肪体を外側に引き出すようにテーピングを施行し、屈曲時の挟み込みを軽減する。テーピング後に屈曲時痛が軽減するかを確認することで、脂肪体原性の疼痛であることの確認にもなる。

膝蓋上嚢の滑走性改善

膝関節筋(大腿骨前面から膝蓋上嚢へ付着)が機能不全に陥ると、膝伸展時に膝蓋上嚢を引き上げる機構が働かず、屈曲時の挟み込みが生じる。

操作手順(膝蓋上嚢の滑走性・伸張性改善):

1. 膝関節軽度屈曲位(10〜20°)で、大腿前面・膝蓋骨直上の皮膚を手掌で把持する

2. 外側・中央・内側それぞれの方向に向けて、膝蓋上嚢の形を広げるように伸張する

3. 膝関節をゆっくり屈曲させながら、膝蓋上嚢が遠位・後方に流れることを確認する

この操作で屈曲角度の改善、あるいは屈曲時の膝前面痛の軽減を確認できれば、膝蓋上嚢の癒着・滑走性低下が痛みの一因であることが示唆される。

鵞足・半膜様筋へのアプローチ

鵞足への軟部組織モビライゼーション:鵞足付着部を直接圧迫しながら、膝関節の内旋・外旋、および膝屈伸を組み合わせて組織の滑走を促す。

ハムストリングス(特に半腱様筋・半膜様筋)の柔軟性低下が鵞足への牽引ストレスを高めている場合、膝伸展位でのハムストリングスストレッチを対症療法として先行させる。

STEP 4|原因療法的介入——メカニカルストレスを根本から下げる

大腿四頭筋訓練の「どれを選ぶか」問題

大腿四頭筋訓練は原因療法の代表だが、「どの方法で行うか」は筋活動パターンによって選ぶべきだ。

筋電図研究からわかっていること:

  • 単純な膝伸展動作:内側広筋・外側広筋・大腿直筋がバランスよく活動する
  • 股関節屈曲を同時に加えた伸展動作(端座位でつま先を天井に向けながら股関節屈曲位を保持して伸展):内側広筋・外側広筋の活動が増大する
  • 股関節伸展を同時に加えた伸展動作:内側広筋・外側広筋がさらに高活動となる
  • クアドセッティング(端座位・足底接地・膝を床に押しつける等尺性収縮):内側広筋・外側広筋・大腿直筋がいずれも活動するが、電気活動量は動的収縮より低い

臨床的判断:膝OA急性期・疼痛強い時期はクアドセッティングから開始し、疼痛が落ち着いた段階で動的訓練に移行する。内側広筋の選択的強化を意図するなら、股関節屈曲位での伸展動作が有効だ。

KAMを下げる股関節外転筋訓練

中殿筋・小殿筋(股関節外転筋群)の強化は、立脚時の骨盤側方制御を改善しKAMを低下させる。側臥位での股関節外転運動(クラムシェル・側臥位挙上)、立位での片脚立ち訓練、バンドを用いた外転抵抗訓練などを漸進的に処方する。

重要なのは「強化した筋力が歩行中に使えているか」を歩行観察で確認することだ。Trendelenburg徴候が残っていれば、筋力はついていても運動制御が追いついていない可能性がある。ゆっくりした片脚立ち練習で神経筋制御を高めることを並行する。

立脚後半の推進パターン改善

膝OA患者では、立脚後半に股関節・膝関節の伸展が不十分で推進力が弱い歩行パターンがみられる。骨盤後方位・股関節・膝関節伸展不足の組み合わせが特徴的だ。

介入アプローチ

  • 股関節屈曲筋(腸腰筋・大腿直筋)の柔軟性改善→立脚後半の股関節伸展確保
  • 腓腹筋・ヒラメ筋の収縮による踏み切り強化(プッシュオフ改善)
  • トレッドミル歩行やバンド歩行を用いた推進パターンの再学習

足部アーチ・足関節背屈の改善

足関節背屈制限がある場合、下腿三頭筋のストレッチと足関節後方関節包へのモビライゼーションを行う。荷重位での背屈改善を目標とし、KAMの直接的な低減を目的とする場合は外側ウェッジインソールが第一選択であり、足部外側への荷重シフトによって内側コンパートメントへの圧縮ストレスを軽減する効果についてはRCTレベルのエビデンスが存在する。一方、内側アーチサポートは扁平足変形を伴う症例における足部・下肢アライメントの補正を主目的とするものであり、KAM低減効果については現時点でエビデンスが混在している。臨床では両者の目的と適応を明確に区別し、患者のアライメント評価に基づいて選択することが重要である。

4ステップの全体フロー

臨床での思考と行動を整理すると以下になる。

“`

問診・視診(どんな動作で・どこが・いつから)

STEP 1|圧痛触診(膝蓋下脂肪体・内側関節裂隙・鵞足 の3点)

↓ 対症療法ターゲット確定

STEP 2|動作分析(KAM・骨盤制御・足部回内の評価)

↓ 原因療法ターゲット確定

STEP 3|対症療法介入(脂肪体・膝蓋上嚢・鵞足への直接操作)

STEP 4|原因療法介入(大腿四頭筋訓練・外転筋訓練・歩行改善・足部修正)

再評価(圧痛・動作・歩行・疼痛NRS)→ 次セッションのターゲット更新

“`

急性期・疼痛増悪期はSTEP 3優先。疼痛が落ち着いてきたらSTEP 4の比重を増やしていく。両者を行き来しながら、患者の状態に応じてフェーズを調整することが現実的だ。

まとめ

膝OAの保存療法は、ルーティンの処方ではなく患者ごとの「どの組織が・なぜ痛いか」の特定から始まる。

  • 圧痛3点(膝蓋下脂肪体・内側関節裂隙・鵞足)を系統的に触診し、組織を特定する
  • KAM・骨盤制御・足部評価で内側ストレスの源を動作から読む
  • 対症療法(組織への直接操作)で疼痛を管理しながら、原因療法(KAM低減・筋力強化・動作改善)で再発を防ぐ
  • 大腿四頭筋訓練はクアドセッティングから動的収縮へ、目的に応じた方法を選ぶ

「なんとなく触れてなんとなく動かす」からの脱却が、若手PT1〜3年目の最初の壁だ。評価と介入を仮説検証のサイクルで回すことが、臨床推論の基礎になる。

おすすめ
  • おすすめの投稿がありません