整形外科学

「筋硬結」理学療法関連用語~正しく理解しよう~

理学療法士は、臨床で「筋〜」という用語に関わることが多い。

代表例

筋出力   筋緊張

筋張力   筋スパズム

筋硬結   etc

その中でも筋が硬く、痛みを伴う症状として『筋硬結』という用語を用いることが多くなってきている。

筋硬結という用語

ドイツのFroriepが報告して以来、多くの報告があり、1989年アメリカで開催された第1回国際筋痛学会で筋硬結の形態学的同意事項が挙げられており、病理組織学的にも根拠の存在する病態となっている。

しかし、1990年代前半の日本理学療法教育には無かったとされる。

近年になって、理学療法士の間でも筋硬結という用語がごく普通に用いられるようになってきた。

具体的な臨床例

肩が凝る

筋が張っている

筋を押したら痛い

上記の主訴の根拠が筋硬結である可能性も高く、筋筋膜性疼痛症候群や慢性筋痛症などにこの筋硬結が存在することが多い。

その他にも、関節リウマチや変形性関節症などの運動器疾患を中心に様々な疾患でみられることがある。

 

筋収縮メカニズム

筋小胞体よりカルシウムイオンが放出され、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの滑走により行われる。

発症機序

筋に対する過負荷、過剰な筋疲労、筋障害をキッカケに、筋小胞体損傷部よりカルシウムイオンが放出され、筋漿膜内カルシウムイオン濃度が上昇し、アクチン・ミオシンフィラメントの滑走が膠着する。

膠着状態を解除しようとATP(Adenosine Triphosphate)産生が働くが、膠着より起こってしまった局所循環障害がATP生産効率を妨げ、滑走の膠着を解除できなくなり筋硬結が発生する。

これは、筋収縮して解除されない状態として索状結節またはトリガーポイントともいわれる。

 

筋硬結の状態とは

局所的に筋収縮がとれない状態とその部位に循環障害が混在した状態を指す。

 

筋硬結の特徴

局所的な筋の硬さと圧迫されたときの痛みで、筋線維広範囲にみられることは少ない。

さらに圧痛場所とは異なった場所に痛みを出現させる関連痛などがみられることもある。

臨床現場では

筋をつまむことによって硬さを確認するのではなく、指で局所を圧迫することにより、局所的な硬さと圧痛を探しながら筋硬結をみていくことが必要である。疲労して筋張力が増した状態の硬さや中枢神経障害の筋緊張の亢進による硬さ、筋スパズムによる硬さなどとは区別して評価することが重要である。

 

筋硬結に対する理学療法は

アクチン・ミオシンフィラメントの滑走の膠着状態を解除し、持続的な筋収縮状態の解放と循環障害の改善が目標となる。

その手段としては、物理療法、筋ストレッチ、筋マッサージが中心となる。

しかし、同時に周囲の筋線維の筋緊張や筋張力、筋スパズムなどが混在することがあるため、ターゲットを絞って治療すべきである。