はじめに

肩の前面が痛み、「上腕二頭筋長頭腱炎」と説明された人にとって、関心の中心はその診断がどのくらい確かなのかです。この記事の題名では、資料の対象に合わせて「上腕二頭筋長頭腱の病変」と書いています。腱炎は、その病変に含まれる一つです。上腕二頭筋長頭腱(long head of the biceps tendon、以下 長頭腱)の病変は、外傷性および変性の腱板断裂にしばしば併存し、痛み・炎症・不安定性の原因になると報告されています1)

先に、この記事で扱う範囲をはっきりさせます。治療法を比べる記事ではありません。ここで整理するのは、触診・徒手検査・超音波・MRI(MR関節造影を含む)が長頭腱の病変をどの程度見分けられるかについて、公開された研究が何を報告しているかです。

用語について一点。この記事の中心となる研究1)は対象を「pathologic LHBT(病的な長頭腱)」とまとめており、著者ら自身が限界として、腱炎・不安定性・部分断裂・完全断裂・SLAP損傷を区別せずに一括していると記しています1)。したがって、この記事に出てくる数値は「長頭腱炎だけ」の診断精度ではありません。本文では資料の分類名をそのまま示します。SLAP損傷そのものについては、SLAP損傷の手術は偽手術と差が出たか 118例の三群無作為化試験で別に整理しています。

結論から書きます。関節鏡下腱板修復を受けた246肩を対象にした診断精度研究では、単独の徒手検査は感度0.32〜0.75・特異度0.35〜0.71、単独の超音波所見は感度0.07〜1.00・特異度0.00〜0.96と、検査・所見ごとに大きくばらつき、感度と特異度の両方が0.75以上の単独検査・所見はありませんでした1)。超音波所見と徒手検査を「または」でつないだ組み合わせのうち、感度0.85以上かつ特異度0.25以上という条件で選ばれた4通りでは、感度は0.85〜0.93、特異度は0.25〜0.35でした1)。これは56通りすべての結果ではなく、条件で選別された4通りの範囲です1)。著者らは、この4通りのどれを使っても病的な長頭腱の85〜93%を正しく診断できる一方で、健常な長頭腱の65〜75%を病的と誤診しうると結論しています1)

なお、感度は「病変がある腱を陽性と判定する割合」、特異度は「病変が無い腱を陰性と判定する割合」です。以下では、この2つの数値を軸に読んでいきます。

触診と徒手検査の精度

触診で腱の位置を当てた割合

長頭腱の検査は、結節間溝(上腕骨の前面にある溝で、長頭腱が通る部位)を指で押さえることから始まることが多いですが、その指が本当に腱の上にあるのかを調べた研究があります3)

前向き・単盲検のパイロット研究で、無症状のボランティア25名(24〜41歳)を対象に、経験の異なる3名の検者(スポーツ医学の専門医、フェロー、レジデント)が触診で結節間溝内の長頭腱の位置を示し、超音波で定めた腱の位置を基準に正誤を判定しました3)

結果は、全体の正答率が5.3%(75回中4回)で、レジデントの0%(25回中0回)からフェローの12%(25回中3回)までの幅でした3)。外した触診はすべて溝より内側で、平均1.4 ± 0.5 cmずれていました3)。著者らは、触診に頼って長頭腱の診断や腱鞘への注射を行うときには注意が要ると述べています3)

この研究の対象は無症状の若い成人であり、有症状者での診断精度を示したものではありません3)。また抄録に基づく記述であり、原著全文は確認できていません。

徒手検査の感度と特異度

中心となる研究1)では、術者が術前に4つの徒手検査(Speedテスト、Yergasonテスト、Kiblerテスト、結節間溝の圧痛)を行い、痛みが出れば陽性と判定しました1)。術中の関節鏡所見を基準にした感度・特異度(括弧内は95%信頼区間)は次のとおりです1)

  • Speedテスト:感度0.75(0.66〜0.83)、特異度0.35(0.27〜0.43)
  • Yergasonテスト:感度0.32(0.24〜0.42)、特異度0.71(0.63〜0.79)
  • Kiblerテスト:感度0.55(0.45〜0.65)、特異度0.63(0.54〜0.71)
  • 結節間溝の圧痛:感度0.75(0.65〜0.82)、特異度0.42(0.34〜0.51)

感度が最も高かったのはSpeedテストと結節間溝の圧痛で、いずれも0.75でした1)。ただし、検者である術者は超音波の結果に盲検化されていません1)。また原著の表では検査ごとに解析対象数が241〜245例と異なり、246例全員ではありません1)

別の研究では、関節鏡手術を予定していた連続65名に対して、Speed・Yergason・upper cut・上腕二頭筋抵抗屈曲(BRF)・ダンベルを用いた修正BRF(mBRF)の5つの検査を術前に行い、関節鏡所見と照合しました4)upper cutテストが最も感度が高く(0.90)、陰性尤度比が最も低く(0.26)、Yergasonテストが最も特異度が高く(0.83)、陽性尤度比が最も高い(2.20)という結果でした4)。mBRFの感度は0.34、特異度は0.75で、BRFの筋力は長頭腱病変と相関しませんでした4)。著者らは、検査の解釈のしかたが違うと、感度が最大29ポイント変わることも報告しています4)。この研究も抄録に基づく記述です。

レベルI・IIの診断研究を集めた系統的レビュー7)では、関節鏡または関節切開を基準にした各検査の感度・特異度が次のように整理されています7)。数値は複数の研究から抽出されたもので、単一の患者群の値ではありません7)

  • Speedテスト:感度54%、特異度81%
  • Yergasonテスト:感度41%、特異度79%
  • 結節間溝の圧痛:感度57%、特異度72%
  • upper cutテスト:感度73%、特異度78%
  • bear hugテスト:感度79%、特異度60%

このレビューは、upper cutテストと結節間溝の圧痛を組み合わせると、並列(どちらかが陽性なら陽性)で感度約88%、直列(両方が陽性なら陽性)で特異度約94%になると報告しています7)。この値は、原著の中で抄録(88.4%・93.8%)、本文(88.3%・93.3%)、表(88%・94%)の小数点以下が一致しないため、ここでは概数で示します7)ただし、この組み合わせの値は、複数の研究から抽出した各検査の感度・特異度を直列・並列の計算式に当てはめて求めた二次的な値であり、同一の患者群で組み合わせを直接検証した結果ではありません7)。尤度比の計算には主観的な検査前確率が用いられています7)

一方、30研究(超音波8件、徒手検査22件)を対象にした別の系統的レビュー5)は、徒手検査の精度は研究間で大きくばらつくと述べています5)。このレビューが価値を認めたのはYergasonテストだけで、SLAP損傷を除く近位の長頭腱病変の確認に用いた場合の要約陽性尤度比は2.56、陰性尤度比は0.70でした5)。著者らは、個々の徒手検査を推奨するには証拠が不十分と結論しています5)。このレビューについての記述も抄録に基づくもので、原著全文は確認できていません。

同じ検査でも、研究によって数値が大きく違います。たとえばSpeedテストの感度は、246肩の研究で0.751)、系統的レビューの集計で54%7)です。対象集団・基準・陽性の定義が違うため、単純に比べることはできません。

超音波とMRIの精度

超音波の所見ごとの精度

中心となる研究1)では、各術者が術前に超音波検査を行い、次の7つの所見を陽性・陰性で記録しました1)

  • ドプラで血流増加がある(血流増加)
  • 結節間溝の近位部で腱のエコー輝度が不均一(近位溝の信号)
  • 結節間溝の遠位部で腱のエコー輝度が不均一(遠位溝の信号)
  • 近位部で腱が内側または外側へ脱臼している(近位溝の位置)
  • 遠位部で腱が内側または外側へ脱臼している(遠位溝の位置)
  • 近位部の腱の断面積が20 mm2以上(近位溝の断面積)
  • 遠位部の腱の断面積が13 mm2以上(遠位溝の断面積)

所見ごとの感度・特異度はこうでした1)

  • 血流増加:感度0.07、特異度0.93
  • 近位溝の信号:感度0.51、特異度0.52
  • 遠位溝の信号:感度0.45、特異度0.56
  • 近位溝の位置:感度1.00、特異度0.00
  • 遠位溝の位置:感度0.14、特異度0.96
  • 近位溝の断面積:感度0.42、特異度0.74
  • 遠位溝の断面積:感度0.60、特異度0.56

「近位溝の位置」は243例全員が陽性で、健常な腱でも陽性になったため、感度1.00・特異度0.00という数値になっています1)。著者らは、血流増加や遠位溝の位置は感度が非常に低く、単独では関節鏡所見との対応が乏しいと述べています1)

これに対し、先述の系統的レビュー5)は、高解像度超音波は長頭腱病変に対して特異度が高いと報告しています5)。統合した尤度比は、脱臼で陽性尤度比38.00・陰性尤度比0.24、完全断裂で陽性尤度比35.50・陰性尤度比0.30でした5)。著者らは、高解像度超音波は疑われた長頭腱病変の確認に信頼できると結論しています5)。この尤度比を含む記述も抄録に基づくもので、原著全文は確認できていません。

つまり、超音波の精度は「何を所見とするか」「どの病変を対象にするか」で大きく変わります。脱臼や完全断裂の確認では特異度が高い一方5)、246肩の研究では、腱の信号と断面積の所見が感度0.42〜0.60・特異度0.52〜0.74、血流増加が感度0.07・特異度0.93、遠位溝の位置が感度0.14・特異度0.96と、所見ごとのばらつきが大きく、感度と特異度の両方が高い単独所見はありませんでした1)

MRI・MR関節造影の精度

関節鏡を基準にしたMRIの診断性能については、2000年1月から2022年4月までの研究を集めた系統的レビューとメタアナリシスがあります6)。完全断裂について6研究(555例)、部分断裂または腱症について10研究(2,487例)が解析されました6)この解析は、通常のMRIだけでなくMR関節造影(MR arthrography、造影剤を関節内に入れて撮るMRI)の研究も含んでおり、完全断裂の群と部分断裂または腱症の群のそれぞれに、MR関節造影を用いた研究が2件ずつ入っています6)。以下の数値は、通常MRI単独の性能ではなく、両者を含めた解析の値です6)

完全断裂に対する特異度は93.0〜99.0%と高く、感度は55.9〜90.0%とばらつきがありました6)。統合した陰性尤度比は0.29(95%信頼区間 0.17〜0.50)、陽性尤度比は37.3(11.9〜117.4)です6)

部分断裂または腱症に対しては、平均感度67.8%(54.3〜78.9%)、特異度75.9%(63.6〜85.0%)で、陰性尤度比0.44(0.32〜0.59)、陽性尤度比2.64(1.91〜3.65)でした6)。著者らは、通常MRIとMR関節造影は完全断裂の診断には高い性能を示す一方、部分断裂・腱症の診断は依然として難しいと結論しています6)。この記述も抄録に基づきます。

組み合わせた場合の精度

どういう研究か

中心となる研究1)は、後ろ向きの診断精度研究(エビデンスレベルIV)です1)。2018年6月から2021年1月にかけて、12施設・14名の整形外科医のもとで孤立性の棘上筋断裂に対する関節鏡下腱板修復を受けた連続284名のうち、術前の超音波検査を受けていなかった38名を除いた246名(246肩)が対象です1)。年齢は57.5 ± 8.8歳(30〜76歳)、男性128名・女性118名でした1)

基準は術中の関節鏡で長頭腱を「病的」か「健常」か判定した結果で、病的と判定されたのは109例、健常は137例でした1)。事前の標本サイズ計算は行われていません1)

研究の背景として著者らは、病的な長頭腱を放置すると腱板修復の成績が損なわれうるという報告があるため、術前診断では特異度を犠牲にしても感度を最大化すべきという立場を示しています1)。つまりこの研究は「見逃さない検査の組み合わせ」を探したものであり、「病変が無いことを確かめる検査」を探したものではありません。

感度が上がり、特異度が下がる

7つの超音波所見と4つの徒手検査を「かつ」「または」で組み合わせた56通りについて、感度・特異度が計算されました1)感度0.85以上に達した組み合わせは13通りありましたが、その特異度はいずれも0.35以下でした1)。そのうち特異度0.25以上だったのは次の4通りです1)以下の「感度0.85〜0.93、特異度0.25〜0.35」という範囲は、この条件で選別された4通りのものであり、56通り全体の範囲ではありません。

  • 圧痛 または 遠位溝の断面積:感度0.93、特異度0.25
  • Speed または 近位溝の断面積:感度0.87、特異度0.28
  • 圧痛 または 近位溝の断面積:感度0.87、特異度0.33
  • Kibler または 遠位溝の断面積:感度0.85、特異度0.35

最も感度が高かった「圧痛 または 遠位溝の断面積」の95%信頼区間は、感度0.86〜0.97、特異度0.18〜0.33です1)。この4通りの正確度(全例のうち正しく判定された割合)は0.54〜0.57でした1)。組み合わせの解析対象数は235〜245例で、こちらも246例全員ではありません1)

著者らの結論は、超音波と徒手検査の組み合わせは、どちらか単独より感度が高いというものです1)。同時に、感度を上げると特異度が下がることも明記されています1)。臨床的な意味として著者らは、上の4通りのどの組み合わせでも病的な長頭腱の85〜93%は正しく診断される一方、健常な長頭腱の65〜75%が病的と誤診されうると書いています1)。著者らはまた、術中の関節鏡所見が長頭腱の関節内部分の最終評価であるべきだとも述べています1)

組み合わせによる感度の上昇は、先述の系統的レビュー7)でも報告されています。upper cutテストと超音波を並列で用いた場合の感度は97%、Speed・Yergason・upper cutの各テストと超音波を直列で用いた場合の特異度は100%とされています7)これらも、既報の各検査の値から計算式で求めた二次的な組み合わせであり、同一の患者群で直接観察された精度ではありません7)。また、このレビューが用いた超音波は単一の所見です1)。同一の患者群で組み合わせを直接検証したのは、246肩の研究1)のほうです。

著者らが書いている限界

中心となる研究1)の著者らは、次の限界を挙げています1)

  • 超音波所見の一部は解釈が主観的であり、14名の術者間で読影が一致するかは評価していない
  • 徒手検査は患者の症状や検者の経験によって結果が変わりうる
  • 腱炎・不安定性・部分断裂・完全断裂・SLAP損傷を区別せず、すべての長頭腱病変を一括している
  • 年齢・BMI・利き手側が診断精度に交絡している可能性を検討していない
  • 対照群が無い(全員が症状のある棘上筋断裂で腱板修復を受けた患者)

これに加えて、対象が腱板修復を受けた患者である点は、読むうえで重要です1)。肩痛の一般集団や、腱板断裂を伴わない長頭腱の病変での精度を示したものではありません。

長頭腱の病変は誰に多いか

診断精度を読むときには、対象集団でその病変がどのくらいの割合にあるかが関わります。肩痛の評価で撮られた連続500件の肩MRIについて、放射線科医の読影を後ろ向きに検討した研究があります2)。2016年5月から2017年6月に、地域の画像検査の約80%を担う放射線科グループで撮影されたもので、骨折・脱臼・手術歴・軟部腫瘤を除外した406件が解析されました2)。エビデンスレベルIIIの予後研究です2)。男性が49%(197/406)、年齢は55 ± 14歳でした2)

読影上の長頭腱の内訳は、正常57%(231件)、腱症のみ29%(119件)、腱症と菲薄化9%(38件)、断裂4%(18件)でした2)。原著の分類は「tendinopathy(腱症)」「thinning(菲薄化)」「rupture(断裂)」であり、本記事もその語を用いています2)

腱板の各腱の状態を調整した解析では、年齢が1歳上がるごとに「長頭腱の腱症のみ(tendinopathy alone)」のオッズ比は1.04(95%信頼区間 1.02〜1.06)でした2)。肩痛でMRIを撮った85歳以上の人は、全員が長頭腱と腱板の両方に腱症(原著の語では tendinopathy)がありました2)。腱板のいずれかの腱に何らかの病変があることは、長頭腱の何らかの病変とオッズ比6.9(2.4〜20)で関連していました2)。一方で、棘上筋腱に何らかの病変(腱症・菲薄化・全層欠損のいずれか)がある328肩のうち49%(162肩)では長頭腱は正常であり、長頭腱に何らかの病変(腱症・菲薄化・断裂のいずれか)がある175肩のうち棘上筋腱が正常だったのは5%(9肩)でした2)。分母はいずれも「腱症のみ」ではなく「何らかの病変」の集団です2)。腱板断裂の診断については、「肩関節周囲炎・腱板断裂の診断」で別に整理しています。

この研究の著者らは、放射線科医の読影をそのまま用いており、読影の信頼性や関節鏡所見との一致は検証していないと記しています2)。また対象は、MRIを受けるほど困っている肩痛の人であり、一般集団を代表しません2)。著者らはこれらの結果を、長頭腱と腱板の腱症が加齢に伴って同時に起こる変化であることを示すものと解釈し、過剰治療への注意を述べていますが2)、これは著者らの見解です。

なお、65名の手術予定患者を対象にした研究4)でも、年齢が高いほど長頭腱病変のリスクが高いと報告されています4)。抄録にはその効果の大きさの単位や比較の基準が示されていないため、ここでは数値を挙げません。

確認できる範囲と限界

この記事で確認できるのは、次の範囲です。

  • 無症状者を対象にしたパイロット研究では、触診で長頭腱の位置を当てられた割合は5.3%で、外れはすべて溝より内側だった3)
  • 腱板修復を受けた246肩では、単独の徒手検査の感度は0.32〜0.75、特異度は0.35〜0.71で、単独の超音波所見は感度0.07〜1.00、特異度0.00〜0.96と所見ごとに大きくばらついた1)
  • 同じ246肩で、超音波所見と徒手検査の56通りの組み合わせのうち、感度0.85以上かつ特異度0.25以上の条件で選ばれた4通りは感度0.85〜0.93、特異度0.25〜0.35だった1)
  • 高解像度超音波は脱臼と完全断裂の確認に特異度が高い5)。通常MRIとMR関節造影を含む解析では、完全断裂に特異度が高いが、部分断裂・腱症の診断は難しい6)
  • 肩痛でMRIを撮った406件では、長頭腱の腱症のみの所見は年齢とともに増え、長頭腱の何らかの病変は腱板の何らかの病変と関連していた2)

一方で、次のことは分かりません。

  • 腱炎だけを取り出した診断精度。中心となる研究は腱炎・不安定性・断裂・SLAP損傷を区別していない1)
  • 腱板断裂を伴わない人での精度。246肩は全員が棘上筋断裂で腱板修復を受けた患者である1)
  • 有症状者での触診の精度。触診の研究は無症状者が対象である3)
  • どの検査を選ぶべきか。系統的レビューは個々の徒手検査を推奨するには証拠が不十分としている5)
  • 治療の選び方。本記事の資料は診断精度と有病割合を報告したもので、治療方針を比べたものではない

まとめ

  • 腱板修復を受けた246肩の研究では、徒手検査も超音波所見も単独では検査・所見ごとに精度が大きくばらつき、感度と特異度の両方が0.75以上のものは無かった。条件で選ばれた4通りの組み合わせでは感度は0.85〜0.93に上がるが、特異度は0.25〜0.35に下がった1)
  • 著者らは、その4通りのどれを使っても病的な長頭腱の85〜93%を正しく診断できる一方、健常な長頭腱の65〜75%を病的と誤診しうると結論している1)
  • 無症状者での触診は、腱の位置を当てられた割合が5.3%だった3)
  • 超音波は脱臼・完全断裂の確認に特異度が高く5)、通常MRIとMR関節造影を含む解析では完全断裂に特異度が高いが部分断裂・腱症の診断は難しい6)
  • 肩痛でMRIを撮った集団では、長頭腱の腱症のみの所見は年齢とともに増え、長頭腱の何らかの病変は腱板の何らかの病変と関連していた2)
  • 中心となる研究は後ろ向き・レベルIVで、腱炎・不安定性・断裂・SLAP損傷を区別しておらず、検者間の一致も評価していない1)。この記事の数値は「長頭腱炎だけ」の診断精度ではない

本記事は、公開されている研究報告の内容を整理したものであり、診断や治療方針を示すものではありません。症状がある場合は自己判断で運動を進めず、医療機関にご相談ください。

出典

  1. Guery J, Antoni M, ReSurg, Gallinet D. Ultrasound findings and clinical testing for preoperative diagnosis of long head of the biceps pathology. J Exp Orthop. 2025;12(3):e70430. PMID: 40980259
  2. Canavan K, Zai Q, Bruni D, Alexander J, Oude Nijhuis KD, Ring D. Long Head of Biceps Tendinopathy Is Associated With Age and Cuff Tendinopathy on MRI Obtained for Evaluation of Shoulder Pain. Clin Orthop Relat Res. 2025;483(5):869-877. PMID: 39679662
  3. Gazzillo GP, Finnoff JT, Hall MM, Sayeed YA, Smith J. Accuracy of palpating the long head of the biceps tendon: an ultrasonographic study. PM R. 2011;3(11):1035-1040. PMID: 21705296
  4. Cardoso A, Amaro P, Barbosa L, Coelho AM, Alonso R, Pires L. Diagnostic accuracy of clinical tests directed to the long head of biceps tendon in a surgical population: a combination of old and new tests. J Shoulder Elbow Surg. 2019;28(12):2272-2278. PMID: 31500987
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  7. Rosas S, Krill MK, Amoo-Achampong K, Kwon K, Nwachukwu BU, McCormick F. A practical, evidence-based, comprehensive (PEC) physical examination for diagnosing pathology of the long head of the biceps. J Shoulder Elbow Surg. 2017;26(8):1484-1492. PMID: 28479256

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Goyasu | 理学療法士

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後藤靖昇(Goyasu)。理学療法士・整形外科専門。2017年より臨床に従事し、膝関節・腰椎・肩関節を中心とした運動器リハビリテーションを専門とする。【資格】日本疼痛リハビリテーション協会マスター/NASM-PES(米国認定パフォーマンス向上スペシャリスト)/理学療法士協会認定管理者研修上級/心理カウンセリング1級・コーチング1級/剣道三段。【役職】愛知県理学療法学会理事(令和7・8年度)。エビデンスに基づく臨床思考と、患者個別の文脈を重視した介入を実践している。
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