リハビリテーション

「体幹コンディショニングの最前線~joint by joint theoryに基づくコンディショニング~」腰痛攻略編 文献抄読

前回に引き続き体幹コンディショニングについてまとめました。僕はこれを基盤にリハビリテーションでの運動療法を実施しています。主に自宅で行っていただくトレーニング・ストレッチの考え方ですね。

実際に施術では徒手療法を中心に行い、確実に変化をだし、その変化を安定させるために自宅での運動をおこなってもらっています。

コンディショニングとは

コンディショニングは、パフォーマンスの向上や障害発生の予防を目的に実施させることである。

アメリカの理学療法士であるCookらが提唱するパフォーマンスピラミットの概念を提唱している。

アスリートが高いパフォーマンスを発揮するためには、

3段のピラミットが安定して積み上がっていることが重要であるという考え方である。

全ての基盤となるfunctional movementでは、mobility(可動性)やstability(安定性)といった基本的な機能が関連する。

パフォーマンスの向上、障害発生の予防には、ピラミットの基盤に当たる可動性と安定性が重要視される。

 

Joint by Joint theory

joint by joint theoryの概念

各関節は可動性または安定性のどちらかを主要な機能として有する。それは交互に積み重なっているという概念である。

障害発生の観点から考えると、機能不全が生じた関節のみに傷害が発生するわけではなく機能不全が生じた関節と隣接する上位・下位の関節で傷害が発生する可能性がある。

例え

腰痛では腰椎の安定性を主要な機能とし、core stability低下といった機能不全が生じることで腰痛発生に至る。

腰椎の上位関節に当たる胸椎や下位関節に当たる股関節は可動性を主要な機能とする。

胸椎や股関節の柔軟性低下や可動性低下といった機能不全が生じると、腰椎が可動性を代償しようとすることで安定性が低下し、腰痛発生に至る。また、逆に腰椎の可動性が低下することで腰痛発生に至る場合もある。

joint by joint theoryに基づくコンディショニング

「Mobility before Stability」という概念に基づいてアプローチを行なっていく。tightnessやstiffness、アライメント不良などによる可動性低下が残存した状態での安定性改善とするエクササイズは身体にとって悪影響を及ぼす。

また可動性低下と安定性低下の両方の機能不全が生じている状態では、可動性低下の影響の方が勝る。

よって、安定性獲得よりも可動性獲得を優先したアプローチが求められる。

コンディショニングを行なっていく上では、初めに可動性に対するアプローチを行い、可動性が獲得された上で安定性に対するアプローチへ移行していく。

さらには、獲得された可動性と安定性を協調的に使用した状態での獲得へつなげていく。

 

スポーツ種目によって発生しやすい機能低下は異なるが、腰痛に関しては、可動性では、胸椎・胸郭、股関節の低下が寄与しやすい。また腰椎安定性が低下していることが原因となっていることが多い。

可動性と安定性は表裏一体の関係にあることを踏まえた上で、可動性低下や安定性低下が生じる原因に対する推察や評価とアプローチが求められる。

胸椎・胸郭の評価&ストレッチ

股関節の評価&ストレッチ

安定性に対する評価&トレーニング

協調性に対する評価とアプローチ

セルフコンディショニングの需要性

パフォーマンスピラミットの概念で述べたように、可動性低下や安定性低下といった機能不全はパフォーマンス低下だけでなく、傷害の発生に関わる重要な問題である。

この可動性や安定性の低下といった機能不全は、スポーツを行うことによる筋の疲労や柔軟性の低下、スポーツ競技特有の動作パターンの繰り返しによるアライメント不良によって引き起こされる。

理学療法士やトレーナーの介入により、可動性や安定性といった身体機能が改善、向上した状態でスポーツへ復帰したアスリートにおいても、スポーツを継続していく以上、アライメント不良に基づく可動性低下や安定性低下は逃れられない問題と言える。

これらの問題に対し、トレーナーをはじめとした、専門家によるコンディショニングを受けられるのは、トップレベルのアスリートに限られているのが現状である。

そのような背景の中で傷害発生を防ぎ、高いパフォーマンスを発揮できるコンディションを獲得するためには、アスリート個人がセルフコンディショニングに対する高い意識を持ち、実践できるかどうかが需要である。