はじめに

筋力トレーニングの後、筋はいったん疲れて力が落ち、休むと元に戻り、さらに前より強くなる。この記事では、こうした考え方、すなわち運動の後に一度低下した状態が回復し、さらに運動前より高い状態になるという考え方を「超回復」と呼んで扱います。この考え方がどこから来たのか、どう定義されてきたのかを検証するものではありません。

そのうえで、超回復のイメージを支える材料になりそうな3つの事柄、すなわち①筋トレの後に筋のたんぱく質をつくる働き(筋たんぱく合成)がどれだけの時間高まっているか、②落ちた筋力がいつ元に戻るか、③トレーニングを続けたときの筋の太さの変化に何が含まれているかを、以下の6件の研究報告の範囲で整理します。

先に範囲をはっきりさせます。この記事は、トレーニングの頻度や休養の日数、食事の内容を勧めるものではありません。扱うのは、筋たんぱく合成の時間経過を測った研究3件、筋力の回復を測った研究1件、10週間のトレーニング中に筋の太さや筋たんぱく合成を測った研究2件が報告した内容です。6件とも原著全文を確認できておらず、抄録に書かれている範囲で記述しています。

結論から書きます。1回の高負荷の筋トレの後、筋たんぱく合成は運動の24時間後の時点でも高まっていました1)2)3)。ただし、その後の経過は研究によって異なり、36時間後にはほぼ元に戻っていたという報告2)と、48時間後も安静時より高かったという報告3)があります。落ちた筋力は、運動の強さによって3時間から33時間で運動前の値に戻りましたが4)、その研究の抄録が報告しているのは、運動前の値に戻った時点までです。また、トレーニング開始から3週目の筋の太さの増加には、むくみ(浮腫)による腫れが含まれていたと報告されており5)、筋たんぱく合成が筋肥大と強く相関したのは、筋の損傷が小さくなった3週目以降でした6)。対象は、1992年の研究が6名ずつの2群、ほかの5件が6〜10名と、いずれも小規模です。

筋トレの後、筋たんぱく合成は何時間高まっているか

4時間後と24時間後に、運動した腕で高かった

1992年の研究では、男性6名ずつの2つの群が、片方の腕の肘を曲げる筋(肘屈筋)で高負荷の筋トレを行い、反対の腕を比較用の対照としました1)。筋たんぱく合成は、標識したアミノ酸(ロイシン)が筋に取り込まれる量を、筋の一部を採取する検査(筋生検)で調べて評価しています1)。一方の群は運動の4時間後、もう一方の群は24時間後に測定されました1)。

その結果、どちらの群でも、運動した腕の上腕二頭筋の筋たんぱく合成は、対照の腕より有意に高い値でした(4時間後の群で毎時0.1007%対0.067%、24時間後の群で毎時0.0944%対0.0452%)1)。著者らは、1回の高負荷の筋トレで、上腕二頭筋の筋たんぱく合成は運動後24時間まで高まりうると結論しています1)。あわせて調べられたRNAの指標から、著者らはこの上昇が遺伝情報を読み取った後の段階(転写後の過程)の変化によるとみられると述べています1)。

36時間後には、ほぼ元に戻っていた

1995年の研究は、1992年の研究と著者が一部共通しており、24時間より後の時点を調べています2)。抄録の冒頭では、それまでの報告として、高負荷の筋トレの後の筋たんぱく合成は4時間後で50%、24時間後で109%高まることが示されていると書かれています2)。

この研究では、健康な若年男性6名が、片方の腕で6〜12RM(6〜12回で限界になる重さ)の肘の屈曲運動を12セット行い、反対の腕を対照としました2)。運動後平均36時間の時点で、運動した腕の筋たんぱく合成は、対照の腕との差が14%以内に戻っており、その差は有意ではありませんでした2)。著者らは、高負荷の筋トレの後、筋たんぱく合成は急速に高まり、24時間後には2倍を超え、その後は急速に低下して36時間後にはほぼ元の水準に戻ると結論しています2)。

合成と分解がともに高まり、48時間後も合成は高かった

1997年の研究は、筋たんぱく質をつくる速さ(合成率)だけでなく、壊す速さ(分解率)も測った点が特徴です3)。対象はトレーニング経験のない8名(男性4名・女性4名)で、筋を縮めながら力を出す運動(求心性)か、伸ばされながら力を出す運動(遠心性)のどちらかを、求心性の最大挙上重量の80%で8回×8セット行いました3)。測定は、食事をとらない状態(絶食状態)で、安静時と、運動の3時間後・24時間後・48時間後の計4回行われています3)。

合成率は、安静時に比べて3時間後で112%、24時間後で65%、48時間後で34%高く、すべての時点で有意に上昇していました3)。分解率も3時間後(31%)と24時間後(18%)に上昇し、48時間後には安静時の水準に戻りました3)。合成率と分解率は強く相関していました(r=0.88)3)。

合成率から分解率を引いた正味の収支は、すべての時点で安静時より有意に改善していました3)。ただし、抄録に示された値は安静時が毎時−0.0573%、3時間後が−0.0298%、24時間後が−0.0413%、48時間後が−0.0440%で、いずれの時点もゼロと有意に異なっていました3)。つまり、絶食状態のこの測定では、運動の後も分解が合成を上回る状態(負の収支)が続いており、その負の幅が安静時より小さくなっていたということです3)。求心性と遠心性の間に、合成率・分解率・正味の収支の有意な差はありませんでした3)。

36時間と48時間の結果の違いをどう読むか

1995年の研究では36時間後にほぼ元に戻っていた一方2)、1997年の研究では48時間後も合成率が34%高い値でした3)。2つの研究は、対象(健康な若年男性6名2)と、トレーニング経験のない男女8名3))、運動(片腕の肘屈曲2)と、求心性または遠心性の運動3))、標識に用いたアミノ酸(ロイシン2)とフェニルアラニン3))が異なります。どの違いが結果の差に関わったのかは、今回確認した抄録からは分かりません。

落ちた筋力は、いつ元に戻るか

高強度では33時間後までに運動前の値へ

2000年の研究は、筋力系の競技を行う男性10名(平均27.5歳)を対象に、2種類の筋トレの後の疲労と回復を比べました4)。高強度の条件では、スクワットとフロントスクワットを3RMの100%、膝伸展を6RMの100%の重さで行い、中強度の条件では、その70%の重さで行いました4)。どちらも90分間です4)。

運動の前、運動の5〜20分後、その後33時間まで繰り返し、等速性の膝伸展、電気刺激で誘発した筋力、スクワットジャンプで脚の伸展筋の働きを測りました4)。膝伸展の成績の低下は、高強度で12〜14%、中強度で6〜7%と、高強度のほうが大きいものでした(P<0.01)4)。スクワットジャンプでも高強度の後に同様の低下がみられ、電気刺激で誘発した筋力の低下も高強度で最も大きく、その低下は20 Hzの刺激で50 Hzの刺激より顕著でした4)。

そして、中強度の後は運動の3時間後までに、高強度の後は33時間後までに、すべての指標が運動前の値に戻りました4)。

回復は一直線ではなかった

この研究では、回復の経過が二相性を示しました4)。運動後の最初の11時間で成績は急速に回復しましたが、その後の11〜22時間には、回復が横ばいになるか、2度目の低下がみられました4)。著者らは、高強度の後に長く続いた成績の低下について、興奮収縮連関や収縮たんぱく質といった構造的な変化の役割を考察しています4)。

ここで、超回復の考え方との関係で押さえておきたい点があります。この研究の抄録が報告しているのは、筋力が運動前の値に戻った時点までです4)。運動前の値を上回ったかどうかについて、抄録には記載がありません。測定は運動後33時間までで、対象は筋力系の競技者に限られています4)。

トレーニングを続けたとき、筋の太さの変化に何が含まれているか

開始3週目の「太くなった」には、むくみが含まれていた

2016年のある研究は、トレーニング経験のない若年男性10名が10週間の筋トレを行う間に、太ももの外側広筋の断面積(筋の太さ)を超音波で3回測りました(開始時・3週目・終了時)5)。あわせて、超音波画像の明るさ(エコー輝度)、筋力、筋の損傷の指標(ミオグロビンとインターロイキン6)も調べています5)。

筋の断面積は、開始時に比べて3週目で約2.7%、終了時で約10.4%大きくなりました5)。一方、エコー輝度も3週目で約17.2%、終了時で約13.7%上昇しており、断面積の増加分で補正すると、開始時より有意に高かったのは3週目だけでした5)。ミオグロビンとインターロイキン6は3週目に上昇しており、最大随意収縮の筋力が増えたのは終了時だけでした5)。

著者らは、トレーニング経験のない若年者で、開始初期にみられる筋の断面積の増加は純粋な筋肥大ではなく、おそらく筋の損傷によるむくみ(浮腫)での腫れを伴っており、それが増加の大きな部分を占めている可能性があると提案しています5)。そのため、特にトレーニングの初期には、むくみや損傷を同時に測らずに断面積の増加を「筋肥大」と呼ぶべきではないとしています5)。

筋たんぱく合成が筋肥大と相関したのは、損傷が小さくなってから

同じ2016年に、著者が一部共通する別の研究も報告されています6)。若年男性10名を対象に、重水を用いて日々の筋原線維たんぱく質の合成を積算して測り、筋の損傷も評価しました6)。外側広筋の筋生検は、運動の前と、運動の24時間後・48時間後に、トレーニングの開始時・3週目・10週目のそれぞれで行われています6)。

結果は次のとおりです6)。

  • 筋線維1本ずつの断面積が増えていたのは、10週目だけだった(P=0.017)6)
  • 運動後の筋原線維たんぱく合成の変化は、開始時のほうが3週目・10週目より大きく(P<0.03)、3週目と10週目は同程度だった6)
  • 筋の損傷(Z帯の乱れなど)は開始時に最も大きく、3週目で弱まり、10週目でさらに弱まった6)
  • 運動後の筋原線維たんぱく合成の変化は、3週目と10週目では筋肥大と強く相関したが(r≈0.9、P<0.04)、開始時には相関しなかった6)

著者らは、トレーニングの初期の筋たんぱく合成の反応は筋肥大を支える方向には向いておらず、それは筋の損傷が最も大きい時期と重なっていたと述べています6)。そして、筋肥大は、筋トレの後に断続的に起こる筋たんぱく合成の変化が積み重なった結果であり、それは筋の損傷が次第に弱まっていくことと重なっていると結論しています6)。

ただし、これは10名を対象とした研究で、示されたのは相関です6)。筋たんぱく合成の変化が筋肥大の原因であることを、この相関だけで確かめたものではありません。

まとめ

  • 1回の高負荷の筋トレの後、筋たんぱく合成は運動した筋で4時間後と24時間後に高かった1)
  • 36時間後にはほぼ元の水準に戻っていたという報告(6名)2)と、48時間後も安静時より34%高かったという報告(8名)3)があり、対象・運動・測定法が異なる2)3)
  • 絶食状態で測った研究では、運動後に合成だけでなく分解も高まり、正味の収支は改善したものの負のままだった3)
  • 筋力系の競技者10名では、低下した筋力は中強度で3時間後まで、高強度で33時間後までに運動前の値へ戻った。回復は二相性で、抄録の報告は運動前の値に戻った時点まで4)
  • トレーニング開始3週目の筋の太さの増加には、むくみによる腫れが含まれていた5)。筋たんぱく合成の変化が筋肥大と強く相関したのは、筋の損傷が弱まった3週目以降だった(10名・相関)6)

この記事で扱ったのは、上記6件の研究報告の範囲です。対象は1992年の研究が6名ずつの2群、ほかの5件が6〜10名と小規模で、若年者や筋力系の競技者が中心であり、高齢の方や病気・けがのある方にそのまま当てはまるかは分かりません。6件とも原著全文を確認できていないため、抄録には示されない解析や条件がある可能性があります。また、筋たんぱく合成・筋力・筋の太さは、それぞれ別の研究で別の条件のもとに測られており、ひとつながりの経過として直接測った研究は、今回確認した資料には含まれていません。どのくらいの間隔で筋トレを行えばよいかは、今回確認した資料からは分かりません。

本記事は、公開されている研究報告の内容を整理したものであり、診断や治療方針を示すものではありません。症状がある場合は自己判断で運動を進めず、医療機関にご相談ください。

筋を使わないときに筋がどれだけ落ちるかを調べた研究については「安静・固定で筋はどれだけ落ちるか 6つの研究の数値」で、遠心性の運動で筋が力を出しやすい長さが変わるかについては「ハムストリングスの至適長は遠心性運動で変わるか」で、それぞれ別に整理しています。

関連note(無料・一般の方と専門職の両方向け):ハムストリングスの「力が最も出る長さ」は変わるのか|遠心性運動と肉離れの研究で言えること、言えないこと

出典

  1. Chesley A, MacDougall JD, Tarnopolsky MA, Atkinson SA, Smith K. Changes in human muscle protein synthesis after resistance exercise. J Appl Physiol. 1992;73(4):1383-1388. PMID: 1280254
  2. MacDougall JD, Gibala MJ, Tarnopolsky MA, MacDonald JR, Interisano SA, Yarasheski KE. The time course for elevated muscle protein synthesis following heavy resistance exercise. Can J Appl Physiol. 1995;20(4):480-486. PMID: 8563679
  3. Phillips SM, Tipton KD, Aarsland A, Wolf SE, Wolfe RR. Mixed muscle protein synthesis and breakdown after resistance exercise in humans. Am J Physiol. 1997;273(1 Pt 1):E99-E107. PMID: 9252485
  4. Raastad T, Hallén J. Recovery of skeletal muscle contractility after high- and moderate-intensity strength exercise. Eur J Appl Physiol. 2000;82(3):206-214. PMID: 10929214
  5. Damas F, Phillips SM, Lixandrão ME, Vechin FC, Libardi CA, Roschel H, Tricoli V, Ugrinowitsch C. Early resistance training-induced increases in muscle cross-sectional area are concomitant with edema-induced muscle swelling. Eur J Appl Physiol. 2016;116(1):49-56. PMID: 26280652
  6. Damas F, Phillips SM, Libardi CA, Vechin FC, Lixandrão ME, Jannig PR, Costa LA, Bacurau AV, Snijders T, Parise G, Tricoli V, Roschel H, Ugrinowitsch C. Resistance training-induced changes in integrated myofibrillar protein synthesis are related to hypertrophy only after attenuation of muscle damage. J Physiol. 2016;594(18):5209-5222. PMID: 27219125

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Goyasu | 理学療法士

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Goyasu
後藤靖昇(Goyasu)。理学療法士・整形外科専門。2017年より臨床に従事し、膝関節・腰椎・肩関節を中心とした運動器リハビリテーションを専門とする。【資格】日本疼痛リハビリテーション協会マスター/NASM-PES(米国認定パフォーマンス向上スペシャリスト)/理学療法士協会認定管理者研修上級/心理カウンセリング1級・コーチング1級/剣道三段。【役職】愛知県理学療法学会理事(令和7・8年度)。エビデンスに基づく臨床思考と、患者個別の文脈を重視した介入を実践している。
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