ギプスやニーブレースで脚を固定した期間、あるいは入院でベッドから離れられなかった期間に、筋がどれくらいの速さで落ちるのか。ここでは、健常者を対象にその低下量を実測した6つの研究の数値を、研究デザインと限界を添えて整理します。

本記事は、公開されている研究報告の内容を整理したものです。診断や治療方針を示すものではありません。

なお、本記事で扱う「不動(disuse)」は、原著が用いている用語です。「廃用性筋萎縮」という語は、本記事では原著の用語の言い換えとしては使いません。

固定2日で大腿四頭筋の容積は減っていた

Kilroe らが 2020 年に報告した研究は、健常な若年男性13名(20±1歳)の片脚をニーブレースで7日間固定し、固定していない側を対照脚として比較したものです。両大腿のMRIと筋生検を、固定前・2日後・7日後に行っています。

固定した脚の大腿四頭筋容積(quadriceps volume)は、2日で1.7±0.3%7日で6.7±0.6% 低下しました。対照脚には変化がありませんでした。

つまり、測定できる低下は2日の時点ですでに生じていました。

5日と14日を比べる——筋力の低下は筋量より大きかった

Wall らが 2014 年に報告した研究では、健常な若年男性24名(23±1歳)の片脚膝関節をフルレッグギプスで固定し、5日群(12名)と14日群(12名)に分けて、固定の前後で大腿四頭筋横断面積(quadriceps cross-sectional area)・脚の除脂肪量(leg lean mass)・筋力を測定しました。

  • 大腿四頭筋横断面積:5日後 −3.5±0.5%(P<0.0001)/14日後 −8.4±2.8%(P<0.001)
  • 脚の除脂肪量:5日後 −1.4±0.7%(P=0.07・有意差なし)/14日後 −3.1±0.7%(P<0.01)
  • 筋力:5日後 −9.0±2.3%(P<0.0001)/14日後 −22.9±2.6%(P<0.001)

5日群と14日群への割付の方法は、抄録に記載がありません。

5日でも14日でも、筋力の低下率は横断面積の低下率より大きい値でした。また、5日時点の脚の除脂肪量の変化は統計学的に有意ではありません(P=0.07)。低下が確認された指標と、確認されなかった指標があります。

生検では、筋のミオスタチンmRNA発現が両群とも固定後に倍増しました(P<0.05)。MAFBx mRNA発現は5日・14日で同程度に増加し、MuRF1 mRNA発現は5日後にのみ有意な増加を示しています。

ベッド上安静1週間で測定されたもの

Dirks らが 2016 年に報告した研究は、健常な若年男性10名(23±1歳)に厳格なベッド上安静を1週間行い、前後を比較したものです。除脂肪体重はDXA、大腿四頭筋横断面積はCT、全身インスリン感受性は高インスリン正常血糖クランプで測定しています。

  • DXAで測定した除脂肪組織:1.4±0.2 kg 減少(P<0.01)
  • 大腿四頭筋横断面積:3.2±0.9% 低下(P<0.01)
  • 1RM:6.9±1.4% 低下(P<0.01)
  • 最大酸素摂取量:6.4±2.3% 低下(P<0.05)
  • 全身インスリン感受性:29±5% 低下(P<0.01)

この研究の抄録に、対照群を置いたという記載はありません。前後の比較として報告されています。

この研究では筋の酸化能の低下を伴っていた一方、筋内脂質の量と飽和度、酸化ストレスの指標、毛細血管密度には変化がありませんでした。

歩数を減らすだけでも脚の除脂肪量は減った

固定やベッド上安静ではなく、日常の活動量を落とす形の研究もあります。Breen らが 2013 年に報告した研究では、健常な高齢者10名(72±1歳)が14日間、1日の歩数を減らしました。歩数は約76%減り、1413±110歩/日 になっています。

14日後、脚の除脂肪量は約 3.9% 減少しました(P<.001)。あわせて、空腹時インスリン抵抗性が約12%増加、食後インスリン感受性が約43%低下し(P<.005)、TNF-α が約12%、C反応性タンパクが約25%増加しました(P<.05)。

食後の筋原線維タンパク質合成(myofibrillar protein synthesis、MPS)は約26%低下しました(P=.028)。一方、空腹時のMPSには差がありませんでした。

活動量そのものを取り上げた当サイトの記事として、フレイル予防の運動習慣|理学療法士が教える自宅でできる3つのポイント があります。

筋原線維タンパク質合成はいつ落ちたか

先の Kilroe らの研究は、重水法で「1日あたりの」筋原線維タンパク質合成速度も測定しています。

固定した1週間全体では、固定脚 0.81±0.04%/日 に対して対照脚 1.26±0.04%/日 で、36±4% 低い値でした(P<0.001)。

期間を分けると、0〜2日は 16±6% 低い値(1.11±0.09%/日)でしたが、これは統計学的に有意ではありません(P=0.153)。有意差が出たのは 2〜7日で、44±5% 低い値(0.70±0.06%/日、P<0.001)でした。対照脚の合成速度は期間を通じて変化していません(P=0.775)。

低下を防げるかを試した2つの試験

不動そのものを避けられない場面を想定して、低下を防げるかどうかを検討した試験があります。以下はいずれも研究の結果であり、臨床での実施を勧めるものではありません。

神経筋電気刺激(NMES)を併用した試験

Dirks らが 2014 年に報告した無作為化比較試験では、健常な若年男性24名(23±1歳)の片脚膝関節を5日間固定し、NMESを行う群(12名)と行わない群(12名)に分けました。NMESは40分のセッションを1日2回、監視下で実施しています。

対照群では大腿四頭筋横断面積が 3.5±0.5% 低下し(P<0.0001)、筋力が 9±2% 低下しました(P<0.05)。NMES群では固定後に有意な筋量の低下は検出されませんでしたが、筋力は 7±3% 低下しています(P<0.05)。著者らは、短期の不動においてNMESは筋量低下を防ぐ有効な介入である一方、筋力の保持はできない、と結論しています。

パーカッシブマッサージを併用した試験

Ahmadi らが 2026 年に報告した論文には、設計の異なる3つの介入研究が含まれています。本記事で扱うのは、そのうちの10日間の下肢固定研究です。週150分以上の運動習慣がある18〜35歳の女性7名・男性10名が、ニーブレースと松葉杖による10日間の固定・免荷を行い、対照群(9名)とパーカッシブマッサージ群(8名)に無作為に割り付けられました。マッサージは初日が10分1回、3日目から20分を1日2回に増やし、免荷期間中継続しています。

結果は次のとおりでした。

  • 外側広筋横断面積:対照群 −1.4±0.9 cm²/マッサージ群 −1.8±1.0 cm²(P<0.001・群間差なし)
  • 大腿四頭筋容積:対照群 −49.8±32.7 cm³/マッサージ群 −38.4±25.5 cm³(P<0.0001・群間差なし)
  • 等尺性最大随意収縮:対照群 −13.07±6.98%/マッサージ群 −15.24±4.59%(P<0.001・群間差なし)

生検での筋線維横断面積は、I型・II型とも両群で同程度に低下しました(P<0.001)。等速性の最大随意収縮も両群で低下し、群の主効果も交互作用もありませんでした。

著者らは、パーカッシブマッサージは10日間の固定による筋量・筋線維横断面積・発揮筋力の低下を防がなかったとし、単独の機械的負荷は不動期間中の筋量・筋力低下を防ぐ有効な方策ではないと結論しています。なお同じ研究では、脂肪酸を基質としたミトコンドリア呼吸能はマッサージ群で部分的に保たれた、とも報告されています。

言えること・言えないこと

言えること

  • Kilroe らの研究では固定2日、Wall らの研究では固定5日の時点で、大腿四頭筋の容積・横断面積の低下が測定されています
  • Wall・Dirks(2016)・Dirks(2014)・Ahmadi の4研究では、筋量の指標と筋力の指標の両方が測定されています。それぞれの結果は上の各節のとおりです。Kilroe らの研究の抄録に、筋力の測定に関する記載はありません
  • Breen らの研究では、固定を行わず歩数を減らすだけでも、14日で脚の除脂肪量の減少が測定されています

言えないこと

  • 対象が限られています。 Wall・Kilroe・Dirks(2016)・Dirks(2014)の4研究は健常な若年男性のみ、Ahmadi らの固定研究は運動習慣のある18〜35歳、Breen らの研究は高齢者10名です。高齢の患者、術後、疾患のある方に同じ数値が当てはまるかは、これらの研究からは分かりません
  • 人数が少ない研究です。 10〜24名の規模であり、群あたりでは8〜12名です
  • 回復の経過は扱っていません。 ここで引用した数値は、いずれも不動期間の前後の比較です。その後どう戻るかは範囲外です
  • どうすればよいかは書けません。 NMESとパーカッシブマッサージの2試験は、それぞれの条件下で何が起きたかを報告したものです。臨床で何を行うべきかを示すものではありません
  • 各指標の生物学的な意味づけも範囲外です。 ミオスタチン・MAFbx・MuRF1 の増減は原著が測定した項目として記載しましたが、その働きの説明は原著の抄録に含まれていないため書いていません
  • 本記事が読めた範囲にも限りがあります。 6つの資料のうち原著全文を参照できたのは Ahmadi らの研究のみで、他の5つは抄録の範囲で書いています。詳細な選択基準・除外基準や欠測の有無は、抄録に記載がないため扱えていません

当サイトには、痛みや関節水腫があるときに大腿四頭筋の収縮が入りにくくなる現象を扱った記事として、関節水腫と疼痛で大腿四頭筋が入りにくいのはなぜ?関節原性筋抑制の臨床推論 があります。本記事で扱った不動の研究とは別の主題です。

まとめ

  • 片脚固定の研究では、大腿四頭筋容積が2日で1.7±0.3%、7日で6.7±0.6%低下しました(Kilroe 2020)
  • 5日の固定で大腿四頭筋横断面積が3.5±0.5%、筋力が9.0±2.3%低下し、14日ではそれぞれ8.4±2.8%、22.9±2.6%でした(Wall 2014)
  • 1週間のベッド上安静で、除脂肪組織が1.4±0.2 kg、大腿四頭筋横断面積が3.2±0.9%減り、全身インスリン感受性が29±5%低下しました(Dirks 2016)
  • 歩数を1日1413±110歩まで減らした高齢者10名では、14日で脚の除脂肪量が約3.9%減少しました(Breen 2013)
  • 5日固定でのNMES併用では筋量低下は検出されず、筋力は7±3%低下しました(Dirks 2014)
  • 10日固定でのパーカッシブマッサージ併用では、筋量・筋線維横断面積・筋力の低下は対照群と変わりませんでした(Ahmadi 2026)

いずれも健常者を対象とした小規模な研究であり、そのまま個々の患者に当てはめられる数値ではありません。症状がある場合は自己判断で運動を進めず、医療機関にご相談ください。

出典

  1. Wall BT, Dirks ML, Snijders T, Senden JM, Dolmans J, van Loon LJ. Substantial skeletal muscle loss occurs during only 5 days of disuse. Acta Physiol (Oxf). 2014;210(3):600-11. PMID: 24168489
  2. Kilroe SP, Fulford J, Holwerda AM, et al. Short-term muscle disuse induces a rapid and sustained decline in daily myofibrillar protein synthesis rates. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2020;318(2):E117-E130. PMID: 31743039
  3. Dirks ML, Wall BT, van de Valk B, et al. One Week of Bed Rest Leads to Substantial Muscle Atrophy and Induces Whole-Body Insulin Resistance in the Absence of Skeletal Muscle Lipid Accumulation. Diabetes. 2016;65(10):2862-75. PMID: 27358494
  4. Breen L, Stokes KA, Churchward-Venne TA, et al. Two weeks of reduced activity decreases leg lean mass and induces “anabolic resistance” of myofibrillar protein synthesis in healthy elderly. J Clin Endocrinol Metab. 2013;98(6):2604-12. PMID: 23589526
  5. Dirks ML, Wall BT, Snijders T, Ottenbros CL, Verdijk LB, van Loon LJ. Neuromuscular electrical stimulation prevents muscle disuse atrophy during leg immobilization in humans. Acta Physiol (Oxf). 2014;210(3):628-41. PMID: 24251881
  6. Ahmadi M, Seaman C, Marchant ED, et al. Repeated application of passive mechanical stress produces selective metabolic and extracellular matrix adaptations in human skeletal muscle but does not prevent disuse-induced atrophy. Function (Oxf). 2026;7(3):e1092025. PMID: 42013026

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Goyasu | 理学療法士

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Goyasu
後藤靖昇(Goyasu)。理学療法士・整形外科専門。2017年より臨床に従事し、膝関節・腰椎・肩関節を中心とした運動器リハビリテーションを専門とする。【資格】日本疼痛リハビリテーション協会マスター/NASM-PES(米国認定パフォーマンス向上スペシャリスト)/理学療法士協会認定管理者研修上級/心理カウンセリング1級・コーチング1級/剣道三段。【役職】愛知県理学療法学会理事(令和7・8年度)。エビデンスに基づく臨床思考と、患者個別の文脈を重視した介入を実践している。
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