キネシオテーピングの効果は偽テープと違うか 腰痛・肩・筋力の6研究

はじめに
伸び縮みするテープを肌に貼る「キネシオテーピング」は、スポーツの場面や理学療法の現場で目にすることの多い方法です。では、このテープを貼ると、痛みや動きは本当に変わるのでしょうか。また、その変化は、決められた貼り方をしたからこそ起きるものなのでしょうか。
この記事では、①キネシオテープがどのような主張とともに広まったか、②偽のテープや張力をかけないテープと比べた臨床試験で、痛みや動きに差があったか、③複数の研究をまとめた解析(メタ解析)で何が分かったかという3つの点を、以下の6件の研究報告の範囲で整理します。
先に範囲をはっきりさせます。この記事は、テープの貼り方を説明したり、使うことや使わないことを勧めたりするものではありません。扱うのは、無作為化比較試験3件(肩の痛み1件、慢性腰痛2件)と、メタ解析3件(スポーツ外傷、長引く筋骨格系の痛み、健常者の筋力)です。6件とも原著全文を確認できておらず、抄録に書かれている範囲で記述しています。
結論から書きます。肩の痛みがある大学生の試験では、偽のテープと比べて差があったのは、貼った直後の「痛みなく腕を横に挙げられる角度」だけでした2)。慢性腰痛の2件の試験では、決められた貼り方と張力をかけない貼り方の間でも3)、運動と徒手療法にテープを加えた場合と加えない場合の間でも4)、主要な結果(痛みと障害)に差はみられませんでした。メタ解析では、最小限の介入と比べると痛みの軽減でテープが優れていた一方、ほかの治療法と比べると差はありませんでした5)。また、健常者の筋力を増やす効果は、平均すると無視できるほど小さいと報告されています6)。
キネシオテープとはどのようなテープか
開発の経緯と、主張されている作用
2012年のメタ解析の抄録は、キネシオテープを、スポーツ外傷をはじめさまざまな不調の治療に使われる、伸縮性のある治療用テープと説明しています1)。テーピングの技法は、1970年代にカイロプラクターの加瀬建造(Kenso Kase)氏が開発したものです1)。
同じ抄録は、キネシオテープには、傷めた筋や関節を支え、皮膚を持ち上げて血液やリンパの流れを良くすることで痛みを和らげる働きがある、と主張されていると紹介しています1)。これは、この抄録が「主張されている内容」として書いているもので、このメタ解析がその作用を確かめたわけではありません1)。
また、2008年のオリンピックで58か国にテープが寄贈され、著名な選手が使っている姿が見られたことで知名度が上がったこと、そして現場の専門家の間で、ほかの伸縮性テープよりキネシオテープを使うべきかが問われていることも、研究の背景として書かれています1)。
なお、2008年の肩の研究の抄録は、テーピングはけがの治療や予防の補助としてよく使われるが、文献で報告されている貼り方の多くは伸び縮みしないテープによるものであり、キネシオテープの方法は近年大きく広まったものの、その使い方についての根拠は乏しいと述べています2)。
研究で比べられた「皮膚のしわを作る」貼り方
2014年の腰痛の研究は、キネシオテーピングの治療マニュアルに沿った貼り方の特徴として、テープに張力をかけて貼り、皮膚にしわ(convolutions)ができるようにすることを挙げています3)。この研究は、その「しわを作る」ことに意味があるかを確かめるために、しわを作らない貼り方と比べたものです(次の章で扱います)3)。
この記事では、具体的な貼り方の手順(張力の強さ、姿勢、貼る位置など)は扱いません。
痛みや動きは、偽のテープ・張力なしのテープと比べて変わったか
肩の痛み:差があったのは、貼った直後の腕を挙げる角度だけだった(2008年)
2008年の研究は、肩の痛みに対するキネシオテープの短期的な効果を、偽のテープ(sham)と比べた無作為化二重盲検試験です2)。二重盲検は、どちらのテープを貼ったかが参加者にも研究を行う側にも分からないようにして行う方法を指す用語です。
対象は、腱板の腱炎またはインピンジメントと臨床的に診断された大学生42名で、治療としてのキネシオテープを貼る群と、偽のテープを貼る群に無作為に分けられました2)。テープは3日間を2回続けて貼り、自己報告による痛みと障害の程度、および痛みなく自分で動かせる範囲(痛みのない自動可動域)を、複数の時点で測っています2)。
結果は次のとおりです2)。
- 治療としてのテープを貼った群で、貼った直後に、痛みなく腕を横に挙げられる角度(外転)が改善した(平均±標準偏差 16.9±23.2度、P=.005)2)
- それ以外の可動域、痛み、障害の点数には、どの時点でも群の間に差はみられなかった2)
著者らは、キネシオテープは、肩の痛みがある患者で、貼った直後の痛みのない自動可動域を改善するうえで、ある程度の助けになる可能性があるとしています2)。一方で、肩の腱炎やインピンジメントが疑われる若い患者で、痛みの強さや障害を減らす目的でキネシオテープを使うことは支持されない、と結論しています2)。対象は大学生で、人数は42名でした2)。
慢性腰痛:「しわを作る」貼り方と、張力をかけない貼り方で差がなかった(2014年)
2014年の研究は、慢性腰痛の方で、治療マニュアルどおりに皮膚のしわを作るキネシオテーピングが、しわを作らない単純な貼り方よりも、痛みと障害を減らすかを調べた無作為化比較試験です3)。割り付けの隠蔽と、割り付けた群のまま解析する方法(intention-to-treat解析)が用いられ、一部の結果は、群を知らない評価者が測りました3)。
対象は、原因を特定できない慢性腰痛(慢性非特異的腰痛)の方148名です3)。
- 実験群:マニュアルどおり、張力をかけて皮膚のしわを作る貼り方を、4週間で8回3)
- 対照群:同じキネシオテープを張力をかけずに貼り、しわを作らない貼り方を、4週間で8回3)
主要な結果は、4週間の介入後の痛みの強さと障害の程度です3)。
- 痛み:平均の差 −0.4点(95%信頼区間 −1.3〜0.4)で、有意な差はなかった3)
- 障害:平均の差 −0.3点(95%信頼区間 −1.9〜1.3)で、有意な差はなかった3)
- 副次的な結果のうち、4週時点の全般的な改善の実感(global perceived effect)では、実験群に有利な小さな差があった(平均の差 1.4点、95%信頼区間 0.3〜2.5)3)
- そのほかの副次的な結果(無作為化12週後の痛みと障害、12週時点の全般的な改善の実感)には、有意な差はなかった3)
著者らは、皮膚のしわを作るように張力をかけて貼ったキネシオテーピングは、測定した結果について、張力をかけない単純な貼り方より有効ではなかったと結論しています3)。そして、この結果は、この方法について提唱されている作用の仕組みに疑問を投げかけるものだと述べています3)。
この研究の対照群も、張力をかけないだけで、同じテープを肌に貼っています3)。したがってこの研究が比べたのは「貼り方の違い」であり、「テープを貼るか貼らないか」ではありません。
慢性腰痛:運動と徒手療法に上乗せしても、差がなかった(2016年)
2016年の研究は、運動と徒手療法による理学療法を受ける慢性腰痛の方で、そこにキネシオテーピングを加えると効果が上乗せされるかを調べた無作為化比較試験です4)。抄録の背景には、多くの診療ガイドラインが腰痛に対して徒手療法と運動を効果的な治療の選択肢として挙げており、その効果を高めるためにキネシオテーピングが広く使われていると書かれています4)。
対象は慢性非特異的腰痛の方148名で、次の2群に無作為に分けられました4)。
- 運動と徒手療法による理学療法を10回(週2回)受ける群4)
- 同じ理学療法に加えて、腰にキネシオテープを貼る群4)
結果は、群を知らない評価者が集めました4)。
- 主要な結果(無作為化5週後):痛みの強さの平均の差 −0.01点(95%信頼区間 −0.88〜0.85)、障害の平均の差 1.14点(95%信頼区間 −0.85〜3.13)で、群の間に差はなかった4)
- 副次的な結果は、無作為化3か月後・6か月後の痛みの強さと障害、および全般的な改善の実感と治療への満足度(この2つの評価時点は、抄録では「治療の5週後」と書かれています)で、これらにも群の間に差はなかった4)
- 例外は無作為化6か月後の障害で、テープを加えなかった群に有利な差があった(平均の差 2.01点、95%信頼区間 0.03〜4.00)4)
著者らは、運動と徒手療法による理学療法を受けた患者は、キネシオテーピングを加えても、追加の利益を得なかったと結論しています4)。この試験は、ClinicalTrials.gov に事前登録されていました(NCT01866332)4)。
2014年3)と2016年4)の2件は、どちらも慢性非特異的腰痛の方148名を対象とした試験ですが、比べた条件が異なります。2014年は「しわを作る貼り方と張力なしの貼り方」、2016年は「理学療法にテープを加えるか加えないか」です。
複数の研究をまとめた解析では、何が分かったか
長引く筋骨格系の痛み:最小限の介入より痛みの軽減で優れ、ほかの治療法とは差がなかった(2015年)
2015年のメタ解析は、慢性の筋骨格系の痛みがある方で、キネシオテーピングを受けた場合の痛みと障害を、最小限の介入やほかの治療法を受けた場合と比べました5)。題名では、対象を4週を超えて続く筋骨格系の痛みとしています5)。8つの主要なデータベースを検索し、17件の臨床比較試験を解析に含めています5)。結果は、標準化平均差(SMD:研究ごとに異なる尺度をそろえて表した差の大きさ)で示されました5)。
- 最小限の介入との比較:痛みの軽減でキネシオテーピングが優れていた(SMD −0.36、95%信頼区間 −0.64〜−0.09、p=0.009)。障害の点数には有意な差がなかった(SMD −0.41、95%信頼区間 −0.83〜0.01、p=0.05)5)
- ほかの治療法との比較:痛み(SMD −0.44、95%信頼区間 −1.69〜0.82、p=0.49)にも障害(SMD 0.08、95%信頼区間 −0.27〜0.43、p=0.65)にも、有意な差はなかった5)
著者らは、キネシオテーピングは痛みの軽減について最小限の介入より優れているが、慢性の筋骨格系の痛みがある方の痛みと障害を減らすうえで、ほかの治療法より優れていることは、現在の根拠では確立していないと結論しています5)。「最小限の介入」や「ほかの治療法」に具体的に何が含まれていたかは、抄録には書かれていません。
スポーツ外傷:痛みへの効果は些細で、可動域の結果は一貫しなかった(2012年)
2012年のメタ解析は、スポーツ外傷の治療と予防におけるキネシオテープの効果を調べたものです1)。97件の論文のうち、筋骨格系の結果を報告し、対照群のある10件を解析に含めました1)。このうち、スポーツに関連したけがを調べた研究は2件(いずれも肩のインピンジメント)だけで、実際にけがをした選手を対象としていたのはそのうち1件でした1)。健常な人を対象とした研究は、けがの予防に関わる可能性があるという理由で含められています1)。
結果は次のとおりです1)。
- 痛みの軽減:臨床的に重要な結果はなく、効果は些細(trivial)だった1)
- 可動域:結果は一貫せず、2件で少なくとも小さな有益な結果がみられた一方、別の2件では些細な結果だった1)
- 固有感覚(体の位置や力の入れ具合を感じ取る感覚):握る力の加減の誤差(力覚の誤差)には有益である可能性が高かったが、足関節の固有感覚には有益な結果がなかった1)
- 筋力:7つの結果で有益だった一方、大腿四頭筋とハムストリングスの最大トルクや握力では、些細な結果が多数あった1)
- 筋活動:一部で大きな変化がみられたが、それが有益か有害かははっきりしなかった1)
著者らは、スポーツ外傷の管理や予防で、ほかの種類の伸縮性テープよりキネシオテープを使うことを支持する質の高い根拠は少ないと結論しています1)。そのうえで、一部のけがをした集団での筋力や可動域、力覚の誤差について小さな利益があるかもしれないが、それを確かめるためのさらなる研究が必要だとしています1)。
健常者の筋力:平均すると、増える効果は無視できるほど小さかった(2015年)
2015年のもう1件のメタ解析は、健常な成人で、キネシオテープの貼り方によって筋の収縮が促され、筋力が増えるかを調べました6)。PubMedとGoogle Scholarを系統的に検索し、19件の研究(530名、筋力についての対の比較48件)を含めています6)。含めた研究の方法論上の質は、中程度から良好でした6)。
- 個々の研究の効果の大きさには大きなばらつきがあった6)
- 全体の効果は r=0.05(信頼区間 −0.23〜0.34)で、平均すると、テープによって筋力が増える可能性は無視できるほど小さかった6)
- 調べた筋群ごとに分けて比べても、効果は筋群によって変わらなかった6)
著者らは、キネシオテープには何らかの治療上の利益があるかもしれないが、健常な成人で筋力の向上を促すことはないと結論しています6)。対象は健常な成人であり、けがや病気のある方の筋力を調べたものではありません6)。
まとめ
- キネシオテープは、皮膚を持ち上げて血流やリンパの流れを良くし、痛みを和らげるなどと主張されてきた伸縮性のテープで、2008年のオリンピックを機に知名度が上がった1)
- 肩の痛みがある大学生42名の試験で、偽のテープと比べて差があったのは、貼った直後の痛みのない外転の角度だけだった2)
- 慢性腰痛148名の試験で、皮膚のしわを作る貼り方は、張力をかけない貼り方と比べて、4週時点の痛みと障害に差がなかった3)
- 慢性腰痛148名の別の試験で、運動と徒手療法にテープを加えても、主要な結果に差がなかった4)
- 慢性の筋骨格系の痛みのメタ解析で、痛みの軽減は最小限の介入より優れていたが、ほかの治療法とは差がなかった5)。スポーツ外傷のメタ解析では痛みへの効果は些細だった1)。健常者の筋力を増やす効果は、平均すると無視できるほど小さかった6)
この記事で扱ったのは、上記6件の研究報告の範囲です。臨床試験3件は、対象が大学生の肩の痛み2)と慢性非特異的腰痛3)4)に限られ、メタ解析3件に含まれた個々の研究の内容は、抄録からは分かりません1)5)6)。6件とも原著全文を確認できていないため、抄録には示されない解析や条件がある可能性があります。テープの貼り方、張力、貼る期間によって結果が変わるかどうか、急なけがや、むくみ・神経の病気などに対してどうかは、今回確認した資料からは分かりません。
本記事は、公開されている研究報告の内容を整理したものであり、診断や治療方針を示すものではありません。症状がある場合は自己判断で対処を進めず、医療機関にご相談ください。
肩を挙げたときの痛みを調べる検査の研究については「肩を挙げて痛む有痛弧テスト、急性棘上筋腱全層断裂の感度97%特異度5%」で、腰痛がある時の運動療法の考え方については「腰痛がある時の運動療法|安静より動くことが大切な理由と選び方」で、それぞれ別に整理しています。
出典
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- Thelen MD, Dauber JA, Stoneman PD. The clinical efficacy of kinesio tape for shoulder pain: a randomized, double-blinded, clinical trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2008;38(7):389-395. PMID: 18591761
- Parreira Pdo C, Costa Lda C, Takahashi R, Hespanhol Junior LC, Luz Junior MA, Silva TM, Costa LO. Kinesio taping to generate skin convolutions is not better than sham taping for people with chronic non-specific low back pain: a randomised trial. J Physiother. 2014;60(2):90-96. PMID: 24952836
- Added MA, Costa LO, de Freitas DG, Fukuda TY, Monteiro RL, Salomão EC, de Medeiros FC, Costa Lda C. Kinesio Taping Does Not Provide Additional Benefits in Patients With Chronic Low Back Pain Who Receive Exercise and Manual Therapy: A Randomized Controlled Trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2016;46(7):506-513. PMID: 27266883
- Lim EC, Tay MG. Kinesio taping in musculoskeletal pain and disability that lasts for more than 4 weeks: is it time to peel off the tape and throw it out with the sweat? A systematic review with meta-analysis focused on pain and also methods of tape application. Br J Sports Med. 2015;49(24):1558-1566. PMID: 25595290
- Csapo R, Alegre LM. Effects of Kinesio(®) taping on skeletal muscle strength-A meta-analysis of current evidence. J Sci Med Sport. 2015;18(4):450-456. PMID: 25027771
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Goyasu | 理学療法士
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