アイシングの効果と注意点 クライオセラピーの適応と有害事象を6研究で整理

はじめに
けがの後や手術の後に患部を冷やすこと(クライオセラピー、いわゆるアイシング)は、広く行われています。一方で、2004年の系統的レビューは、臨床での使い方には大きなばらつきがあり、指針は経験に基づいて作られ続けていると述べています1)。では、冷やすことにはどのような効果が確かめられていて、どのような有害事象が報告されているのでしょうか。
この記事では、①どのような場面で効果が調べられ、どこまで分かっているか(適応)、②冷え方が体の条件でどう変わるか、③どのような有害事象が報告されているか(注意点)という3つの点を、以下の6件の研究報告の範囲で整理します。
先に範囲をはっきりさせます。この記事は、冷やす時間・回数・方法を勧めるものではありません。扱うのは、系統的レビュー2件(急性の軟部組織損傷のランダム化比較試験を集めたもの1件、人工膝関節置換術の後を対象にしたコクラン・レビュー1件)、足関節捻挫の方を対象にしたランダム化比較試験1件、健常な方の太ももで冷え方を測った実験研究1件、神経の障害が起きた6例の報告1件、アスレティックトレーナーへの質問紙調査1件です。原著全文を確認できたのは足関節捻挫のランダム化比較試験1件だけで、残りの5件は抄録に書かれている範囲で記述しています。
結論から書きます。急性の軟部組織損傷については、2004年のレビューの時点で試験の質が低く(PEDroの平均3.4/10)、最適な方法や時間の根拠は無かったと報告されています1)。人工膝関節置換術の後については、出血量・痛み・可動域がわずかに良くなる可能性が低い確実性で示された一方、著者らはその利益が使用を正当化するには小さすぎる可能性があると結論しています6)。有害事象としては、末梢神経の障害(6例、全例が自然に回復)4)や、アレルギー反応・熱傷・不耐(痛み)5)などが報告されています。なお、「禁忌」にあたる状態を一覧にして示した資料は、今回の6件には含まれていません。
冷やすことの効果は、どこまで分かっているか
急性の軟部組織損傷:試験の質が低く、最適な方法の根拠は無かった(2004年の系統的レビュー)
2004年の系統的レビューは、急性の軟部組織損傷(筋・腱・靱帯などのけが)から回復しつつあるヒトを対象に、クライオセラピーを単独で、またはほかの治療と組み合わせて用いたランダム化比較試験を集めて評価しました1)。文献の検索は2002年4月までで、試験の質はPEDroスケール(理学療法の試験の質を10点満点で評価する尺度)を用いて2名が別々に評価しています1)。
結果は次のとおりです1)。
- 条件を満たした試験は22件で、PEDroの平均は10点中3.4点だった1)
- 氷に運動を組み合わせた方法が最も有効であるという、わずかな根拠があった(足関節捻挫の後と手術の後)1)
- 圧迫に氷を加えることに有意な効果があるという根拠は乏しかった。ただし、これは入院患者の治療に限られた結果だった1)
- 閉じた軟部組織損傷(皮膚に傷のないけが)で氷の効果を調べた研究は少なく、最適な方法や時間を示す根拠は無かった1)
著者らは、急性の軟部組織損傷の治療について根拠に基づく指針を作るには、質の高い試験がさらに多く必要だと結論しています1)。このレビューは2002年4月までの試験をまとめたものであり、それ以降に発表された試験は含まれていません1)。
足関節捻挫:2つの冷やし方を比べると、1週目の活動時の痛みだけに差があった(2006年のランダム化比較試験)
2006年のランダム化比較試験は、軽度から中等度の急性の足関節捻挫の方89名(スポーツをする方44名、一般の方45名)を、2つの冷やし方に割り付けて比べました2)。対象は受傷から48時間以内の16歳以上の方で、骨のけが、複数のけが、寒冷に関連する状態(cold related conditions)がある方は除外されています2)。足首の靱帯の検査(前方引き出しテスト・距骨傾斜テスト)で陽性だった方も除外されました2)。
この試験で用いられた方法は次のとおりです2)。ここに書くのは研究の条件であり、この記事として勧める方法ではありません。
- 冷やす道具は両群とも同じで、論文はこれを溶けかけた氷水(0℃)のパックと記載している。水を満たして凍らせた袋(20 cm×20 cm)を、使う前に30秒間お湯に当て、濡らしたタオル1枚で包んだ2)
- 標準法(46名):20分間続けて冷やすことを2時間ごとに行った2)
- 間欠法(43名):10分冷やし、10分外して室温で休み、もう一度10分冷やすことを2時間ごとに行った2)
- どちらも受傷後72時間、本人が自分で行った2)
足首の機能、痛み、腫れを、開始時と1・2・3・4・6週の時点で評価しました2)。結果は次のとおりです2)。
- どちらの群でも、機能・腫れ・安静時の痛みは時間とともに有意に改善した2)
- 機能・腫れ・安静時の痛みには、2つの群の間で有意な差はなかった2)
- 活動時の痛みは、間欠法の群で、開始時から1週までに標準法の群より有意に大きく減った2)
- 試験の期間中、皮膚の熱傷や神経の麻痺などの有害な影響は、どちらの群でも報告されなかった2)
この試験には、論文自身が挙げている限界があります2)。19名が追跡できず、全項目のデータがそろったのは70名でした。事後に計算した検出力(差があるときにそれを見つけられる確率)は、欠けたデータを補った解析でも0.68で、目標とした80%を下回っています2)。また著者らは、痛みの点数の差は統計的に有意でも臨床的な意味をもたない場合があるという指摘を引用しています2)。さらに、この試験は2つの冷やし方を比べたもので、冷やさない群は設けられていません2)。したがって、冷やすこと自体の効果をこの試験から判断することはできません。
人工膝関節置換術の後:わずかな改善の可能性と、その確実性の低さ(2025年のコクラン・レビュー)
2025年のコクラン・レビューは、2012年に発表された版の更新で、人工膝関節置換術の後48時間以内に行うクライオセラピーの効果を調べたものです6)。2022年5月27日までの文献を検索し、22件の試験(ランダム化比較試験20件、比較臨床試験2件)、合計1839名を対象にしています6)。参加者の平均年齢は試験ごとに64〜74歳でした6)。
主な結果は次のとおりです6)。「確実性」は、研究の偏りや結果のばらつきなどから、その結果がどの程度信頼できるかをGRADEという方法で評価したものです6)。
- 出血量(術後1〜13日):冷やさない群825 mL、冷やした群561 mL(平均差264 mL少ない、95%信頼区間7〜516 mL少ない。12試験956名、低い確実性)6)
- 術後48時間の痛み(0〜10の尺度):4.8点と3.16点(平均差1.6点低い、95%信頼区間2.3〜1.0点低い。6試験530名、低い確実性)6)
- 退院時の膝の可動域:62.9度と71.2度(平均差8.3度大きい、95%信頼区間3.6〜13.1度。3試験174名、低い確実性)6)
- 膝蓋骨の中央での腫れは、術後2〜6日で改善していた(平均差7.32 mm少ない、7試験403名)が、6週・3か月の時点では差がなかった6)
- 輸血の割合、術後2週の膝の機能、有害事象の総数、有害事象による脱落は、確実性が非常に低く、改善するかどうかは不確かだった6)
- 鎮痛薬の使用量、入院期間、活動量、生活の質には、有意な利益はみられなかった6)
著者らは、冷やすという治療の性質上、参加者や評価者に割り付けを隠すことが難しく、多くの試験で偏りのリスクが高かったと述べています6)。そのうえで、出血量・痛み・可動域への利益は、使用を正当化するには小さすぎる可能性があると結論しています6)。
冷え方は、体の条件で変わる
皮下脂肪が厚いほど、筋の温度が下がるまでに時間がかかった
2002年の研究は、皮下脂肪の厚さによって、同じ程度に冷えるまでの時間が変わるかを調べました3)。対象は太ももの前面の皮脂厚(皮膚をつまんで測る厚さ)が40 mm未満の健常なボランティア47名で、皮脂厚によって4群に分けています3)。太ももの前面に750 gの砕いた氷の袋を当て、皮下脂肪の下1 cmの筋の中の温度が開始時から7℃下がるまでの時間を測りました3)。
平均の冷却時間(平均±標準偏差)は次のとおりで、4群のすべての間で差があり、脂肪が厚いほど時間が長くなっていました3)。
- 皮脂厚0〜10 mm:8.0±3.4分3)
- 皮脂厚11〜20 mm:23.3±6.7分3)
- 皮脂厚21〜30 mm:37.8±9.6分3)
- 皮脂厚31〜40 mm:58.6±11.7分3)
著者らは、脂肪の厚さと必要な冷却時間の間には臨床的に重要な直接の関係があり、同じ程度に筋の温度を下げるには冷やす時間を大きく調整する必要があると述べています3)。具体的には、皮脂厚20 mm以下では25分、21〜30 mmでは40分、30〜40 mmでは60分が必要になるという見解を示しています3)。
ただし、この研究で測られたのは「筋の温度が7℃下がるまでの時間」です3)。対象はけがをしていない健常な方で、冷やしたことによる治療の効果や、長く冷やしたときの安全性は評価項目に含まれていません3)。上に挙げた時間は著者らの見解であり、その時間冷やすことが安全である、あるいは効果があることを示した結果ではありません。
最適な時間や方法は、まだ根拠で決まっていない
前の章の2004年の系統的レビューは、最適な方法や時間を示す根拠は無かったと報告しています1)。2006年の足関節捻挫の試験も、その背景として、2つの冷やし方を厳密に比べた研究はそれまで無く、最適な方法・時間・頻度を示す根拠は無いと述べています2)。この試験が比べたのは2つの方法だけであり2)、冷やす時間の長さそのものを幅広く比べたものではありません。
2002年の研究は、同じ冷やし方でも、皮下脂肪の厚さによって筋の冷え方が大きく異なることを示しています3)。今回の資料からは、決まった時間を誰にでも当てはめてよいという根拠は得られません。
報告されている有害事象と、注意点
末梢神経の障害:6例の報告(1992年)
1992年の報告は、スポーツのけがの治療としてクライオセラピーを用いた後に起きた末梢神経の障害6例をまとめたものです4)。抄録によると、この障害は運動選手に一時的な支障をもたらしうるもので、6例はいずれも自然に回復しました4)。
著者らは、この合併症を避けるために、主要な末梢神経がどこを通っているか、その上にある皮下脂肪の厚さ、組織を冷やす時間の3つを考慮すべきだと述べています4)。どの神経に、どのような冷やし方で障害が起きたかは、抄録には書かれていません。この報告は6例の症例のまとめであり、どのくらいの頻度で起きるかを示すものではありません4)。
アスレティックトレーナーへの調査:アレルギー反応・熱傷・不耐(2003年)
2003年の研究は、物理療法などで起きた合併症の頻度と種類を知るために、米国の認定アスレティックトレーナー3012名に質問紙を送った記述的な調査です5)。回答したのは905名(30%)で、そのうち26%が合併症を経験したと回答し、合計362件の合併症が記録されました5)。
- 合併症全体のうち42%がクライオセラピーによるもので、多かったのはアレルギー反応(86件)、熱傷(23件)、不耐・痛み(16件)だった5)
- 電気刺激は合併症の29%、温熱療法は22%、運動療法は7%を占めた5)
著者らは、この調査の結果は、査読を受けた文献に記録されている合併症と大きく異なっていたと述べ、その理由として、経験による学習、使われる物理療法の変化、合併症の全般的な過少報告の可能性を挙げています5)。この調査は回答者の報告に基づくもので、回答率は30%でした5)。クライオセラピーを何回行ったうちの何件か(発生率)は、抄録からは分かりません。
手術の後の試験で報告された有害事象と、試験で除外された状態
前の章の2025年のコクラン・レビューでは、有害事象として、不快感、局所の皮膚の反応、表在性の感染、寒冷による損傷、血栓に関連する事象(thrombolytic events)が挙げられています6)。有害事象の総数は、冷やした群と比較した群の間でリスク比1.30(95%信頼区間0.53〜3.20、16試験1199名)で、確実性は非常に低く、冷やすことで有害事象が減るかどうかは不確かとされています6)。
2006年の足関節捻挫の試験では、除外基準に「寒冷に関連する状態」が含まれていました2)。ただし、この試験の本文では、具体的にどの状態を指すかは列挙されておらず、文献の引用で示されています2)。
この記事で扱った6件の資料には、クライオセラピーを行ってはならない状態(禁忌)を一覧として示したものは含まれていません。そのため、この記事では禁忌にあたる疾患や状態を列挙しません。
まとめ
- 急性の軟部組織損傷のランダム化比較試験22件を集めた2004年のレビューでは、試験の質が低く(PEDroの平均3.4/10)、氷に運動を組み合わせた方法が最も有効というわずかな根拠があった一方、最適な方法や時間の根拠は無かった1)
- 足関節捻挫の方89名の試験では、間欠的に冷やす方法で1週目の活動時の痛みが少なかったが、機能・腫れ・安静時の痛みには差がなかった。冷やさない群は無く、検出力は目標を下回っていた2)
- 人工膝関節置換術の後については、出血量・痛み・可動域がわずかに良くなる可能性が低い確実性で示され、著者らはその利益が使用を正当化するには小さすぎる可能性があると結論した6)
- 健常な方の太ももで、筋の温度が7℃下がるまでの時間は、皮脂厚0〜10 mmで平均8.0分、31〜40 mmで平均58.6分と、皮下脂肪の厚さで大きく異なった3)
- 有害事象として、末梢神経の障害6例(全例が自然に回復)4)、アレルギー反応・熱傷・不耐(痛み)5)、手術の後の試験での不快感・皮膚の反応・寒冷による損傷など6)が報告されている
この記事で扱ったのは、上記6件の研究報告の範囲です。原著全文を確認できたのは足関節捻挫の試験1件だけで2)、ほかの5件は抄録の範囲で書いているため、抄録には示されない解析や条件がある可能性があります。2004年のレビューは2002年4月まで1)、2025年のコクラン・レビューは2022年5月27日まで6)の文献をまとめたもので、それ以降の研究は含まれていません。どのようなけがに、どの方法で、どのくらいの時間冷やせばよいか、また冷やしてはいけないのはどのような場合かは、今回確認した資料からは示せません。
本記事は、公開されている研究報告の内容を整理したものであり、診断や治療方針を示すものではありません。症状がある場合は自己判断で冷やし方を決めず、医療機関にご相談ください。
けがや手術の後に問題となる腫れについては「浮腫とは・・・腫脹とは・・・(腫脹との違い)」で、膝の中に液体がたまったときの太ももの筋力の変化については「実験的な膝の関節液貯留で大腿四頭筋の筋力が低下」で、それぞれ別に整理しています。
出典
- Bleakley C, McDonough S, MacAuley D. The use of ice in the treatment of acute soft-tissue injury: a systematic review of randomized controlled trials. Am J Sports Med. 2004;32(1):251-261. PMID: 14754753
- Bleakley CM, McDonough SM, MacAuley DC, Bjordal J. Cryotherapy for acute ankle sprains: a randomised controlled study of two different icing protocols. Br J Sports Med. 2006;40(8):700-705. PMID: 16611722
- Otte JW, Merrick MA, Ingersoll CD, Cordova ML. Subcutaneous adipose tissue thickness alters cooling time during cryotherapy. Arch Phys Med Rehabil. 2002;83(11):1501-1505. PMID: 12422316
- Bassett FH, Kirkpatrick JS, Engelhardt DL, Malone TR. Cryotherapy-induced nerve injury. Am J Sports Med. 1992;20(5):516-518. PMID: 1443317
- Nadler SF, Prybicien M, Malanga GA, Sicher D. Complications from therapeutic modalities: results of a national survey of athletic trainers. Arch Phys Med Rehabil. 2003;84(6):849-853. PMID: 12808537
- Aggarwal A, Adie S, Harris IA, Naylor J. Cryotherapy following total knee replacement. Cochrane Database Syst Rev. 2025;10(10):CD007911. PMID: 41165130
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Goyasu | 理学療法士
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